州立大学の私学化(読み)しゅうりつだいがくのしがくか(その他表記)privatization of the state universities

大学事典 「州立大学の私学化」の解説

州立大学の私学化
しゅうりつだいがくのしがくか
privatization of the state universities

アメリカ合衆国の教育研究の一翼を担う州立旗艦大学(アメリカ)(各州の中心的な大学)が,州政府の統制を離れ,入学者の選抜や授業料の決定などについて私学が行使する権利に与ろうとする傾向を指す。20世紀の中途まで,州立大学財政の大きな部分は州政府からの支出で賄われ,授業料は廉価で基金収入(endowmentの利子)への依存度も低かった。しかしその後,州立研究大学の財政における州からの支出の割合は減少の一途を辿り,旗艦大学の州外学生向け授業料は今や私立研究大学の授業料に迫りつつある。旗艦大学(アメリカ)は基金の拡大にも力を注ぎ,その規模が全米の上位50校に入る州立大学は,1988年の9校から,2011年には17校とほぼ倍増した。授業料と基金収入とに財政面で依存する私学型化である。財政難の州政府にとって,寄付や研究費,州外からの志願者を集めやすい旗艦大学は支出カットの対象にできる。一方,旗艦大学は私立大学並みの授業料で収入を増やし,州内外から学生を自由に選抜し,研究教育上の自由度を高めて大学の水準維持を企てる。州立の研究大学の存在意義が問われる現象である。
著者: 立川明

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報

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