日本大百科全書(ニッポニカ) 「差し金」の意味・わかりやすい解説
差し金(操り人形、歌舞伎)
さしがね
(1)操り人形用語。人形の手の指を動かすため、腕の中に差し入れておく細い鉄の棒のこと。人形の指先に糸をつけ、差し金にまとい、人形遣いがこれを操作することによって指先を動かす。文楽(ぶんらく)の人形では左手に使用。
(2)歌舞伎(かぶき)小道具の一つ。おもに小動物を登場させるときに使う黒塗りの竹棒。しなうように針金をつけ、その先に、形態をまねてつくった動物の模型をつけ、後見が操作する。『保名(やすな)』『鏡獅子(かがみじし)』のチョウ、『山門』のタカ、『先代萩(せんだいはぎ)』のスズメやネズミなどのほか、狐火(きつねび)や人魂(ひとだま)を表す焼酎火(しょうちゅうび)の操作にも使う。なお、日常語でも、「だれだれの差し金で動く」というように、陰で人を操って使う意味に用いる。人形用語から出たものらしい。
[松井俊諭]