平均思想(読み)へいきんしそう

改訂新版 世界大百科事典 「平均思想」の意味・わかりやすい解説

平均思想 (へいきんしそう)

中国特有の平等思想。春秋戦国以後,宗法(そうほう)制が崩壊し,社会の中に諸種の不均衡が生ずると,これを是正して民生を安定させ,社会の調和を図ることが必要となった。その最初の表現は《荀子》王覇篇など先秦諸子の主張する政治思想の中に見られる。漢代以後大土地所有が進展すると,しばしば土地の国家管理が試みられたが,王莽おうもう)の王田制や北魏以後の均田法では,儒家の井田法の思想が支えとなった。政治上の不公平に反抗する民間からの運動も,しばしば平均思想を根拠とした。ことに私有財産制の深まった唐末以後には,王仙芝や黄巣が〈平均(均平)大将軍〉と名のり,北宋の王小波が貧富の均等化を目標とするなど,民衆反乱のスローガンとなった。宋以後の国家もくりかえし〈均税〉〈均役〉などを実行して,富力と税役額の対応化につとめた。平均思想は太平天国天朝田畝制度や孫文の平均地権(三民主義)のように近代の革命運動にも及び,土地所有制そのものを問う思想的根拠となった。ただ平均思想は単なる個人の平等な権利を主張するものでなく,社会の不均衡・不合理を是正して天下太平を期する理想国家の思想として理解さるべきである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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