改訂新版 世界大百科事典 「幻夢物語」の意味・わかりやすい解説
幻夢物語 (げんむものがたり)
室町時代の物語。作者未詳。京都大原の修行僧幻夢は連歌を機縁に親密となった日光山の稚児花松のことが忘れられず,日吉山王への祈願の帰途,日光竹林房まで尋ねて行く。その夜,花松と再会するが,翌朝老僧から花松が7日前に父の仇を報じ,みずからも討死にしたことを聞き,昨夜の花松が亡霊であったことを知る。無常を観じた幻夢は高野山に登り,翌年の命日のころ,偶然にも花松を討った武士で,今は修行僧となった若僧と知り合い,互いに懺悔し,発心,往生する。《佐竹文書》に同じ内容の記事が見られ,実話に基づいて作られたと考えられる。《三国伝記》巻十二,十五にも類話があり,《三人法師》との影響関係も重要である。稚児物語の一つ。
執筆者:浅見 和彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報