日本大百科全書(ニッポニカ) 「引目鈎鼻」の意味・わかりやすい解説 引目鈎鼻ひきめかぎはな 大和(やまと)絵において、とくに貴族の男女の顔貌(がんぼう)表現に用いられた技法。ふっくらとした面長の顔形に、繊細な変化をもたせた一線で目を描き、鼻も細線で鈎形にし、唇は多くの場合朱色の点で表す。その没個性的な表現は日本独自の象徴的なもので、とくに『源氏物語絵巻』(徳川本、五島(ごとう)本)などの王朝の絵画作品においては、見る者を絵画空間に引き込むという効果を発揮した。しかし鎌倉時代以降、徐々に類型化してその効果を失った。[加藤悦子] 絵巻にみる引目鈎鼻 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例