張物(読み)はりもの

精選版 日本国語大辞典 「張物」の意味・読み・例文・類語

はり‐もの【張物】

〘名〙
布地を洗って糊をつけ、板や籡(しんし)に張ってしわを伸ばし、乾かすこと。また、その布地。
※宇津保(970‐999頃)吹上上「これははり物の所。めぐりなきおほきなるひはだや。〈略〉色々のものはりたり」
芝居大道具の一つ。木の枠に紙や布を張って、屋台の壁や背景の絵などを画いたもの。
歌舞伎彩入御伽草(1808)皿屋敷の場「正面二重舞台、縁側付き障子、向う張り物、鼠壁
外見を立派に見せかけること。体裁をつくろうこと。また、そのもの。
※俳諧・毛吹草(1638)二「せけんははりもの」
④ 大道商いをする商人

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デジタル大辞泉 「張物」の意味・読み・例文・類語

はり‐もの【張(り)物】

洗ってのりをつけた布を、張り板伸子しんしに張って乾かすこと。また、その布。
芝居の大道具で、木材を骨にして紙・布などを張ったもの。彩色して背景や屋体の壁などに用いる。

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世界大百科事典(旧版)内の張物の言及

【大道具】より

…大道具師の祖といわれるのは江戸日本橋の宮大工の子,初世長谷川勘兵衛(?‐1659)で,その後世襲した代々の勘兵衛によって技術は急速に進歩して現在に及んでいる。 歌舞伎の大道具は,基本的には〈二重(にじゆう)〉と〈張物(はりもの)〉の二つで構成される。二重とは舞台の床と平行で一段高い,家屋,土手,山などの土台を作る台のことで,高さによって常足(つねあし),中足(ちゆうあし),高足(たかあし)などの種類がある。…

【歌舞伎】より

… 大道具小道具も,特殊な例外を除いては写実を避け,様式性を重んじて製作される。定式(じようしき)の大道具の基本は〈二重〉と〈張物〉から成り立っている。〈二重〉は高さに4段階があり,〈高足(たかあし)〉〈中足(ちゆうあし)〉〈常足(つねあし)〉〈尺高(しやくだか)〉と呼ぶ。…

※「張物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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