日本大百科全書(ニッポニカ) 「しわ」の意味・わかりやすい解説
しわ
しわ / 皺
wrinkle
真皮内の弾力線維や結合織線維の退化、変性、萎縮(いしゅく)により、または皮膚の水分や皮下脂肪の減少などによって皮膚の弾力性が失われて緩みのできたものをいう。最初はいわゆる小じわであるが、しだいに大きなたるみになってくる。皮膚の老化現象の一つで、顕微鏡的には20歳ごろからすでに現れてくるが、種々の外因(日光、風雨、寒冷、不適当な化粧品や外用薬の多用など)が増強因子となる。予防には、これらの外因を避け、栄養状態をよくし、精神および身体の過労を避けることなどがたいせつである。
治療としては、美容外科領域で行う「しわとり術」がある。アメリカでは日常茶飯事的に行われているという。方法は、こめかみから耳前部、耳後部にかけて長い切開を加え、頬(ほお)にかけて十分に剥離(はくり)してから、後ろ上方へ皮膚を全体としてつり上げ、こめかみの後ろと耳の後ろで余分の皮膚を切り取って縫いつけるもので、通常は全身麻酔下で行う。傷跡は大部分毛髪で隠すことができ、約2週間で治る。ときに顔面神経麻痺(まひ)などの合併症がおこりうるが、そのほとんどの例が一過性で、数週間から数か月で元に戻る。
眼瞼(がんけん)(まぶた)や目じりのしわをとる場合は、上下眼瞼の余分な皮膚を切除して縫合することにより比較的簡単に修正できるが、下眼瞼はとりすぎると兎眼(とがん)(まぶたを閉じても眼球の一部が露出している状態)になるので注意が必要である。この手術は、術中目を開閉させながら切除範囲を決めて行うほうがよいので、局所麻酔で行うことが多い。
あごの下、額、唇のしわ、たるみは、しわ伸ばし手術が非常に困難で、現状ではよい方法がないとされている。アメリカでは試験的にシリコンの注射なども行われているが、日本ではこの目的に使用できるものが普通には入手不能である。未解決の問題が多く、一般には勧められていない。
[水谷ひろみ]