改訂新版 世界大百科事典 「心血管造影法」の意味・わかりやすい解説
心血管造影法 (しんけっかんぞうえいほう)
cardioangiography
心機能や血行動態を知るための検査法の一つ。心臓の内腔あるいは血管内にX線透過度の低い造影剤を注入し,X線照射によって得られる陽性像をフィルムやビデオテープ,ディスクなどに記録し,目的とする部位の形態的変化および造影剤の流れのようすを観察する。静脈性心血管造影法と選択的心血管造影法とがある。静脈性心血管造影法は,両腕の肘静脈あるいは大腿静脈に針を留置して,総量40~50mlの造影剤を急速に注入し,大静脈から右心房,右心室,肺動脈に至る右心系,および肺静脈から左心房,左心室,大動脈,太い動脈に至る左心系の全体的な流れを観察する方法である。大静脈の造影以外は,造影剤が希釈されるので形態的変化の詳細はわかりにくいが,digitalis subtraction angiography(X線画像を定量化し,造影後の画面の数値から造影前の画面数値を差し引いて造影剤の演算画像を得るもの)を応用することによって,左心系でもより明りょうなX線像を得ることができる。選択的心血管造影法はカテーテル法によらなければならない。X線透視下で,先端に多くの穴のある造影用カテーテルを目的の心血管内に位置させ,約40mlの造影剤を毎秒10~15mlで急速注入する。注入した場所によって左心室造影,冠動脈造影などと呼ぶ。両者は成人の心臓病において最もよく行われる造影法で,左心室造影によって左心室内腔の形態的変化,心筋の収縮の状態,僧帽弁や大動脈弁の開閉状態などを明らかにすることができ,冠動脈造影では,狭心症や心筋梗塞(こうそく)患者の冠動脈の狭窄,閉塞,副血行路の有無などが明らかとなる。これらの検査は心臓病患者の手術適応の有無決定に重要な判断所見を与えてくれる。
執筆者:柳沼 淑夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報