忍摺り(読み)シノブズリ

デジタル大辞泉 「忍摺り」の意味・読み・例文・類語

しのぶ‐ずり【忍×摺り/信夫×摺り】

シノブの茎や葉の色素を布にすりつけて表したねじれたような模様。また、そのすり模様の衣服。昔、陸奥むつの国信夫しのぶ郡(福島県福島市)で産した。もじずり。しのぶもじずり。
「その男、―の狩衣かりぎぬをなむ着たりける」〈伊勢・一〉

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精選版 日本国語大辞典 「忍摺り」の意味・読み・例文・類語

しのぶ‐ずり【忍摺・信夫摺】

  1. 〘 名詞 〙 忍草の葉を布帛に摺りつけて染めたもの。その模様の乱れた形状から、しのぶもじずりともいう。また、和歌俳諧などで、動詞「しのぶ(忍)」の意にかけて用いることもある。しのぶ。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「その男、しのぶずりの狩衣をなむ著たりける」(出典:伊勢物語(10C前)一)
    2. 「しのぶもぢ摺の石を尋ねて、忍ぶのさとに行く〈略〉早苗とる手もとや昔しのぶ摺(ずり)」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)忍ぶの里)

忍摺りの語誌

( 1 )信夫」は陸奥の歌枕。「伊勢物語‐一」の「かすが野の若紫のすり衣しのぶのみだれ限り知られず」の歌によって、「信夫摺」が信夫の地の名産として知られるようになった。
( 2 )「しのぶもぢずり」以外にも「しのぶのすり衣」「しのぶの衣」と詠まれた例なども多く、「乱れ」と結びついた素材として使われている。

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