思付(読み)おもいつく

精選版 日本国語大辞典 「思付」の意味・読み・例文・類語

おもい‐つ・く おもひ‥【思付】

[1] 〘自カ四〙 心をひかれる。好意をもつ。
(イ) 愛情をよせる。惚れこむ。懸想(けそう)する。
万葉(8C後)一三・三二四八「藤波の 思ひもとほり 若草の 思就(おもひつき)にし 君が目に 恋ひや明かさむ 長き此の夜を」
(ロ) 好感を持つ。親しみ懐(なつ)く。心服する。味方する。
源氏(1001‐14頃)夕霧「その折に、故ゑもんの督(かみ)をば、とりわきておもひつきにしぞかし。〈略〉なつかしうおぼえし」
[2] 〘他カ五(四)〙 ある考えが心に浮かぶ。考えつく。思い当たる。思い出す。
平中(965頃)九「見てのみぞ我はもえます春山のよそのなげきをおもひつきつつ」
[3] 〘他カ下二〙 ⇒おもいつける(思付)

おもい‐つき おもひ‥【思付】

〘名〙
① あるものに心を寄せること。ひいきすること。また、人が好意を寄せるような外見
浮世草子傾城色三味線(1701)湊「人さまの評判で、おもひ付のないお客も、お心のむいてくる物でござんす」
② 思い巡らしたあげく、または、ふと考えが心に浮かぶこと。また、その考え。着想考案
※浮世草子・世間胸算用(1692)五「おなしおもひつきにて、油がはらけと油樽と、人の智恵ほどちがふたる物はなかりし」
③ (形動) おもしろい、気にいったと感じる物事のさま。また、うまい考え。よい着想。
※俳諧・誹讔三十棒(1771)「銭やすでおもひ付な格子造作は戸棚ひとつ」
④ 明治時代、奇風を好む女子が結った髪型。おもいつきがた。

おもい‐つ・ける おもひ‥【思付】

〘他カ下一〙 おもひつ・く 〘他カ下二〙
① (あることを)考えつく。思い当たる。
仮名草子浮世物語(1665頃)二「いかがせんと案じけるが、急度(きっと)おもひつけたる事ありと」
② 心をよせる。思いをよせる。
※右京大夫集(13C前)「枕にも人にも心おもひつけてなごりよなにときみぞいひなす」

おぼし‐つ・く【思付】

〘自カ四〙 (「おもいつく(思付)(一)」の尊敬語) 好意をお持ちになる。愛情をお寄せになる。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「朱雀院は、一宮よりまさるはなしとぞ思したなる。それは、小さくよりおぼしつきたればにこそ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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