格子(読み)コウシ

デジタル大辞泉 「格子」の意味・読み・例文・類語

こう‐し〔カウ‐〕【格子】

細い角材や竹などを、碁盤の目のように組み合わせて作った建具。戸・窓などに用いる。
寝殿造りの建具であるしとみのこと。
格子戸」の略。
格子じま」の略。
グリッド
結晶格子」の略。
回折かいせつ格子」の略。
格子女郎」の略。また、格子女郎のいた所。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「格子」の意味・読み・例文・類語

こう‐しカウ‥【格子】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 細い角材を縦横に組み合わせて作った建具。寝殿造りの建具である蔀(しとみ)のこと。
    1. 格子<b>①</b>〈紫式部日記絵巻〉
      格子紫式部日記絵巻
    2. [初出の実例]「かうし共も、人はなくしてあきぬ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    3. 「かうし引き上げ給へり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)末摘花)
  3. 細い木や竹などを、縦横に間をすかして組んで、窓や戸口の外などに打ちつけたもの。
    1. [初出の実例]「ある数寄者、かうしの内をのぞき、この壺を見て」(出典:咄本・山岸文庫本昨日は今日の物語(1614‐24頃))
  4. こうしど(格子戸)」の略。
    1. [初出の実例]「おもての隔子(カウシ)をあらくたたきて」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)一)
  5. 染織品の文様の一種。碁盤の目のように縦横に筋を出したもの。
    1. [初出の実例]「ふたあゐのかうしぬののかりばかま」(出典:続古事談(1219)五)
  6. 遊女屋にある。また、その張見世(はりみせ)遊女屋をもいう。
    1. 格子<b>⑤</b>〈菱川師宣画 よしはらの躰〉
      格子〈菱川師宣画 よしはらの躰〉
    2. [初出の実例]「かうしの外には、人の見るをも知らでのさばれば」(出典:仮名草子・仁勢物語(1639‐40頃)下)
  7. 江戸時代の遊女、また、その位をいう。
    1. (イ) 遊女の階級の一つ。京都島原では、遊女の第二級天神をいい、大坂新町では、第一級の太夫、また、江戸吉原では、第二級の遊女をいった。大格子の内に部屋をもっていることからいう。
      1. [初出の実例]「太夫とかうしとのあいだに、よびだしといふくらゐの女郎あり」(出典:評判記・吉原すずめ(1667)下)
    2. (ロ) 遊女屋の格子の所に出て、張見世をする遊女の総称見世女郎。格子女郎。
      1. [初出の実例]「マアあがんなんしと格子のたまはく」(出典:雑俳・柳多留‐四〇(1807))
  8. 紋所の名。蔀(しとみ)の格子をかたどったもの。
  9. 物理学で、結晶格子、回折格子をいう。
  10. 数学で、基本になるベクトル単位として原点から規則正しく配列された点、およびそれらの点を結ぶ線とそれらの線で囲まれた面の総体。一つのベクトルで規定される一次元格子、二つのベクトルで規定される平面格子(二次元格子)、三つのベクトルで規定される空間格子(三次元格子)がある。
  11. 電子管の電極の一つ、グリッドをいう。制御格子遮蔽格子、抑制格子などがある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「格子」の意味・わかりやすい解説

格子(建築)
こうし

木、竹、金属などを直角に碁盤目(ごばんめ)に組んだもの。組格子ともいう。古くは子(かくし)とよんだ。建具では蔀(しとみ)や引違い戸、あるいは嵌殺(はめころ)しとして用いられた。桟の間を透かすものや、裏に薄板を張るものもある。本来、格子は碁盤目に組み、これを狐(きつね)格子というが、一般には竪桟(たてざん)を密にし横桟を粗くしたものも格子とよぶ。竪桟あるいは横桟だけのものを連子(れんじ)といい、前者を竪連子、後者を横連子という。連子も中桟を入れることもある。連子を板に彫り出して形式的にしたものを盲連子(めくられんじ)という。

 格子は近世になって採光通風と盗難防止を兼ねて、民家の正面に盛んに取り付けられた。格子は形式によっていろいろの名称がある。京都の町屋にみられるような竪子(たてこ)の細く横桟の少ない京格子、太い角材を並べた問屋(といや)格子、丸太を半割りにして丸みを正面にみせる丸太格子、細い格子を密に並べた江市屋(えいちや)格子、千本格子、1本あるいは2本置きに長短の竪桟を交互に入れた親子格子、横桟の間に取り外せる小格子を入れた大阪格子など、その種類は多い。また、格子戸も、碁盤目の木連(きづれ)格子戸、横桟の少ない連子格子戸、竪桟を2本ずつ並べた吹寄(ふきよせ)格子戸、等間隔に細く並べた小間返し連子格子戸など各種あって、部屋の使い方によって使い分けられている。

[工藤圭章]



格子(科学用語)
こうし

科学の用語としては周期的構造の物体を意味する。光学で波長の測定に使う回折格子は、ガラスまたは金属の表面に多数の等間隔な平行線を引いたもので(1センチメートル当り1万本以上も)、一次元格子の例である。縦・横に編んだ織物や金網は二次元格子の例である。糸や針金は互いに直交する必要はなく、格子の単位は、六角形でも、より複雑な形でもよい。形のそろったミカンを整然と箱に詰めたものは、三次元格子の例といえる。結晶中の原子は三次元空間に周期的に並んでいるから、みごとな三次元格子である。現実の格子は、完全に周期的ではなく、所々に格子欠陥をもっている。

 電気工学で格子(グリッド)とよぶのは、本来は三極真空管の網状電極を意味したが、今日ではその形状に関係なく、それに相当する役割の電極をさす。

[上田良二・外村 彰]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「格子」の意味・わかりやすい解説

格子【こうし】

(1)細長い部材を碁盤目に組み合わせたもの,または一定間隔に並列したもの。戸・窓・天井・屋根妻等に使用される。組み方には幅とあきを同寸にした小間返格子,碁盤目に組んだ地蔵格子等があり,様式により杉丸太を二つ割りにして組んだ丸太格子,太い角材を用いた問屋格子,あきの細かい江市屋格子,狐(きつね)格子等がある。→連子(れんじ)(2)グリッドの訳。(3)結晶格子の略。(4)回折格子の略。
→関連項目幾何学文

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「格子」の意味・わかりやすい解説

格子
こうし

(1) lattice 空間において,等間隔の平行線群の交わりによって生じる図形を,一般に格子という。一定の構造単位の格子状配列から成る固体物質を結晶という。 (2) grid グリッドともいう。電子管の陰極と陽極の間に置かれた平面格子状または網状の電極。格子に信号電圧をかけて陰極から陽極へ流れる電流 (陽極電流) を制御するものを制御格子といい,増幅用電子管,放電管などで重要な働きをする。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

ゲリラ豪雨

突発的に発生し、局地的に限られた地域に降る激しい豪雨のこと。長くても1時間程度しか続かず、豪雨の降る範囲は広くても10キロメートル四方くらいと狭い局地的大雨。このため、前線や低気圧、台風などに伴う集中...

ゲリラ豪雨の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android