日本大百科全書(ニッポニカ) 「怪談の短編小説集)」の意味・わかりやすい解説
怪談(小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の短編小説集)
かいだん
Kwaidan
小泉八雲(やくも)(ラフカディオ・ハーン)の短編小説集。1904年ロンドンとボストンのホウトン・ミフリン社から出版。『古今著聞集(ここんちょもんじゅう)』『玉すだれ』『夜窓鬼談』『仏教百科全集』『百物語』などの古典や直接農民などから取材した話に基づいて、「耳なし芳一(ほういち)の話」「おしどり」「むじな」「ろくろ首」「雪女」などの17編が「怪談」として収められ、別に「蝶(ちょう)」「蚊(か)」「蟻(あり)」の3編が「虫の研究」に入っている。八雲は叙情性豊かな筆致で怪異に満ちた話を描き、単なる日本紹介の域を超えた文学的芳香の高い短編小説集に仕上げている。
[富田 仁]
『平井呈一訳『怪談――不思議なことの物語と研究』(岩波文庫)』▽『斎藤正二訳『完訳怪談』(講談社文庫)』