フランスの女流作家ジョルジュ・サンドの小説。1848年二月革命瓦解(がかい)後の精神的挫折(ざせつ)のなかで執筆、同年新聞小説として発表。故郷である中部フランス、ベリー地方の自然と民を素材に書いた一連のいわゆる田園小説の代表作。双子(ふたご)の兄弟愛に「少女ファデット」(原題)との恋の絡む物語はむしろ平凡であるが、若き日の作者を思わせるファデットの個性、方言を交えてつづられる村の暮らしや人々の素朴な心に得がたい魅力がある。出奔(しゅっぽん)した母、薬草を扱う祖母ゆえに「魔法使い」(ファデットにはその意味が含まれる)として疎外される少女、そこに弱者への不正をみて立ち向かい、ついに愛を成就(じょうじゅ)する若者という図式は、作者の共和主義への夢を反映している。
[大崎明子]
『宮崎嶺雄訳『愛の妖精』(岩波文庫)』
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