双子(読み)そうし(英語表記)twins

精選版 日本国語大辞典 「双子」の意味・読み・例文・類語

そう‐し サウ‥【双子】

〘名〙 ふたご。双生児。双児(そうじ)

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デジタル大辞泉 「双子」の意味・読み・例文・類語

ふた‐こ【双子/二子】

双子糸ふたこいと」の略。
双子織り」の略。

ふた‐ご【双子/二子】

同じ母親から一度の出産で生まれた二人の子。双生児。
[類語]双生児

そう‐し〔サウ‐〕【双子】

ふたご。双児そうじ

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改訂新版 世界大百科事典 「双子」の意味・わかりやすい解説

双子 (ふたご)
twins

双生児ともいう。1回の分娩で2子が生まれること。

双子を妊娠していることを双胎妊娠といい,また2人以上を妊娠しているとき多胎妊娠という。双胎妊娠の頻度は世界的にみて平均すると約80回の妊娠に1回といわれているが,民族や地域によって多少の差があり,北欧のデンマークスウェーデンでは1.5~1.6%と多く,南米諸国,ベトナム,中国ではずっとその頻度が少なくなる。日本ではちょうど中間くらいで,約1%とされている。

双子は発生機序のうえから一卵性双生児と二卵性双生児に分けられる。一卵性双生児monozygotic twinsとは,1個の卵に1個の精子が受精してできた受精卵が,2個の胚に分割して発育したものであり,二卵性双生児dizygotic twinsは,片側か両側の卵巣から2個の卵の排卵がほぼ同時に起こり,そのおのおのの卵に1個ずつの別の精子が受精し,同時に発育したものである。欧米では一卵性双生児より二卵性双生児のほうが約3倍から5倍多いが,日本では両者はほぼ50%ずつである。多胎妊娠には遺伝的傾向があり,多胎妊娠の家系には双子をはじめとして多胎の頻度が多くなり,双子の出生率は,そうでない家系での出生率の4倍から7倍にもなるとされている。また,最近では排卵誘発薬が多用されるようになってきたため,この薬剤によって過排卵が誘発されて多胎妊娠をするケースも増加してきた。この場合,二卵性双生児が多く発生することになる。

二卵性双生児の場合,二つの受精卵はそれぞれ別に子宮内に着床するので,その着床した場所が離れていると図のcのように胎盤は別々に2個が存在することになる。ところが,同じ二卵性双胎でも二つの受精卵が互いに相接して,ごく近くに着床すると胎盤の一部がついてしまって,胎盤それ自体は二つあるのだが,図のdのように一つに癒合したようにみえてしまう。このような二卵性双生児の胎児はおのおの異なった遺伝質をもち,性別も違うこともある。

 これに対し一卵性双生児の場合は一つの受精卵が二つに分割したものであるから,図のa,bのように胎盤はもともと一つであり,これを2人で共用することになる。羊膜はこの場合でも一人一人の胎児に独立して存在するので,羊膜腔は図のaのように二つ存在するのが普通だが,ときには,羊水の圧力(子宮の内圧)や胎児の動きのために中央の羊膜隔壁が破れてしまい,一つの大きな羊膜腔の中に2人の胎児が生活していく単羊膜性双胎になることもある(図のb)。しかし,この場合は,胎児が2人とも動きまわることによって,互いの臍帯がもつれあったり,からまったりして血行がうまくいかなくなり,片方の胎児が死亡するという事故が起きやすくなる。さらに一卵性双生児では妊娠中には胎盤が一つなので,その胎盤の中で互いの胎児の血管が吻合(ふんごう)してつながってしまうことが多い。それがたまたま一児の動脈と他方の胎児の静脈とがつながると,血流は動脈から静脈へと流れるので,動脈を吻合した胎児は自分の血液を絶えずもう一方の胎児に与えている供血者になってしまい,発育が遅れたり,ときには死亡してしまう。一方,静脈を吻合した胎児は片方の胎児の分も血液をもらうので多血症になり,発育は非常によくなる。このようなことは一卵性双胎特有のもので,双胎間輸血症候群といわれている。また,一卵性双生児では一つの受精卵からの分割のために,2児はまったく同じ遺伝質を有していることになる。

一卵性双生児で,体の一部分が癒合している症例を癒合体あるいは癒合双子conjoined twinsというが,タイ(シャム)からアメリカに連れられてきた中国系の兄弟(チャン=エン兄弟)が例外的に長命であったことから,俗に〈シャム双生児Siamese twins〉といわれている。癒合している部位は頭部,胸部,腹部,臀部とさまざまであるが,今日では出生直後に癒合を切り離す手術を行って生存できる例も多くなった。

つい最近までは双胎妊娠は妊娠後半期にならないと診断できなかったが,超音波断層診断の普及によって,今日では妊娠3ヵ月から4ヵ月の早期の段階で診断することも可能になった。双胎妊娠は妊娠中毒症や早産を起こしやすいので,早期診断は,これらを予防し,早くから妊婦を管理するうえで非常に有益である。

双子は早産になりやすいので,できるだけ大きく育てて妊娠末期に生ませることが最もたいせつである。また,胎児の位置に異常があったときには帝王切開をすることもある。双子の妊娠子宮は胎児が2人入っているので大きくのびきっているため,分娩後に収縮が悪く出血が多くなりやすい。この点も分娩時に注意を要する。
執筆者:

対の2人の心身の発達にかかわる遺伝的・環境的条件はほぼ同じ(一卵性)かそれに近い(二卵性)とみていい。それは一般のきょうだいが同一家庭に育つ場合とは異なる特別なものなので〈双生児状況twin situation〉と呼ぶ。双生児状況は性格,行動の多くの面で2人に共通性,類似性をもたらすが,それにとどまらず次のような問題を生じることがある。2人の間の情緒的結合が強くなりすぎて自他の分化が進まず自我の発達が遅れる。このため自主性が乏しくなることがある。また対の相手がきょうだいと友だちの役割を同時に担うため,広く友だち関係を発展させることに困難を感じる例がある。能力的にはとくに言語発達の初期に遅れや発音の不明りょうさが認められることがある。2人の間でいわば以心伝心コミュニケーションができてしまうためである。そこで幼児期からこれらを考慮した教育を行う必要があるが,それを家族だけに期待するには無理がある。できれば早期から保育・教育機関に入れ,クラスや所属グループを別にする,生活,遊び,学習等の場面で対の相手以外と交流し共同する体験をさせる,またそのための技術も具体的に指導し会得させるなど,家族外の人々の協力も必要である。しかし,双子の教育で最も基本におかれるべきことは,2人がその共通性,類似性にもかかわらず個性もまたもつことに注目することであり,それぞれを一個の人格として扱うことである。
執筆者:

双子は世界の諸民族において,異常な存在として神話や民話の主題になっているばかりでなく,出生時の処理や儀礼などでその特殊性を強調されている。また,双子の両親や次に生まれた子どもにも特別の意味が与えられていることもある。三つ子以上の多生児は双子と同様に扱われることもあれば別の扱いを受けることもある。双子の発生率は前記のように日本人で約1%,ヨーロッパ人ではその1.5倍前後,アフリカ人ではさらに高いといわれる。ちなみに,双子の文化複合が最も発達しているのはアフリカの諸民族の間である。

 双子は不吉だとみなす民族と,歓迎すべきものとする民族がある。不吉とされる理由は,一度に複数の子どもが生まれるのは動物と同じだから(日本では畜生腹といわれた),悪霊や邪術師のしわざだから(西アフリカのコンコンバ族),母親の姦通の結果だから(南米のチャコ族),男女の双子は母の胎内で近親相姦を犯すから(サモア),親を殺す(スーダンディンカ族),あるいは親が死ぬから(ラオスラメート族)など,動物性,邪性と結びつけられた場合である。このような社会では,双子はその双方か一方が殺されるか,社会的に排除され,あたかも双子が存在しなかったかのような処置を取ることが多い。

 双子が歓迎されるのは,神の贈物,多産の象徴とされる場合で,スーダンやウガンダでは双子は鳥であり,鳥は神のものであるという論理で祝福される(ヌエル,マンダリ,テソなど)。この場合も双子は神性を帯びているために危険でもあり,また双子の怒りは非常に恐れられる。双子の儀礼は多くの場合,たいへん複雑で,性的冗談を伴ったり,両性具有,秩序逆転といった象徴性の高いものである。

 実際に生まれた子どもは1人なのに,出産時に目に見えぬ動物がいっしょに生まれ,その動物がまつられることを求めてたたるという観念もある(スーダンのディンカ,ウガンダの諸族)。また王権が双子の権威に支えられていることも多い。ブガンダ王国では王のへそ(臍)の緒は王の双子として神殿にまつられ,ガーナのアシャンティ王国では,平民の双子は王の召使となった。

 社会的に双子は,兄弟の序列という秩序を混乱させるパラドックスを生み,そのため双子を一人の人格として扱う民族もある(ヌエル,ザンビアのヌデンブ)。また,双子は特殊な能力があるとされ,占師やシャーマンになる民族もある(北米のクリーク族チョクトー族)。

 双子を〈2〉という数字で表し,上述のような対応の形態を整理すると次のようになる。(1)2→0 殺してしまう。(2)2→1 1人を殺すか追放する。(3)2=1×p(pは神秘力) 神秘力をもった単一人格とみなす。(4)2=(1+1)×p 神秘力をもった2人の人格とする。(5)2=(1+x)×p(xは目に見えない存在) 一人の人間を実は双子の一方とみなす。
執筆者:

西洋でも,ギリシア神話ディオスクロイカストルポリュデウケス),ローマ伝説のロムルスとレムス,旧約聖書のエサウとヤコブの物語など,双子が登場する多くの伝承が伝えられている。そして上記の後2者の場合のように,しばしば兄弟間の対立と抗争ののち,一方による他方の殺害や権力の奪取という結果を迎えるが,このような筋立ては双子に限らなければさらにその例は多くなる。これは,兄弟ないし双子という表象が,光と闇,天と地,右と左などと同様,あらゆる二元的対立をもって世界の創造や発展・変化を説く神話的思考になじみやすいということであろう。ただし,ディオスクロイのように対立ではなく協調に向かい,両者ともに守護神として崇敬されるようになることもある。

 そのディオスクロイはゼウスによって天界に挙げられ星座となった。これがいわゆる双子座(ジェミニ)であり,さらに占星術における黄道十二宮の第3番目の宮である双子宮も彼らに由来する。双子宮には5月22日から6月21日までの期間が当てられ,惑星では水星,金属では水銀,色ではだいだい,宝石ではメノウ,身体部位では両腕に結びつけられて複雑な象徴体系を形成している。またこの宮は,協調的で多血質の性格,芸術的才能などを人間に賦与するとされる。錬金術では,王と王妃の婚姻とならんで,しばしば双子の男女の抱擁が,対立物(硫黄と水銀)の結合による〈賢者の石〉の造成過程の寓意として描かれる。

 特殊な双子であるシャム双生児にも,古くからプラトンによる両性具有の神話,オウィディウスによるヘルマフロディトスの物語,中世の旅行記に出てくる辺境民族のイメージなどと結びついた虚実定めがたい多くのエピソードが伝えられているほか,動物や人間が背中あわせで上下逆に配された図像が中世からルネサンスにかけて多くみられる。ほぼ実在が想定される例としては,1490年にグラスゴーで生まれてスコットランド王ジェームズ4世に仕え,巧みな楽器演奏と2部合唱,数ヵ国語による当意即妙な会話で大いにもてはやされた兄弟が知られている。しかしフランスの外科医A.パレ《怪物誌》(1573)に挿絵入りで載せられているおびただしい例には架空のものも少なくないと思われる。18世紀のビュフォン《自然誌》には姉妹の例がみえ,当時にあって彼女たちは果たして結婚できるか否か,〈復活の日〉において一つの体かそれとも二つの体でよみがえるのか,などの論争をひき起こしたという。19世紀から20世紀にかけては,ヒルトン姉妹Violet & Daisy Hiltonなど,とくにアメリカの興行界で盛名をはせたシャム双生児も多い。
両性具有
執筆者:

日本では昭和初期ころまで,双子は常態でない異例なものとされ,育てるのも大変なため一般に喜ばれなかった。双子に関する俗信は多く,双子栗,ミカンの双子などを食べたり,ハチの巣をまたぐと双子ができるといったり,また男女の双子はメオトゴといってとくに嫌われた。双子は先に生まれたほうが兄姉で後のほうが弟妹とされる。東北地方などには,双子が生まれると,父親はすぐに屋根にのぼって妻が双子を産んだとか双子の父はここにいるなどと叫ぶ風習があった。こうすれば双子を再び産まないという。
執筆者:


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百科事典マイペディア 「双子」の意味・わかりやすい解説

双子【ふたご】

双生児

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世界大百科事典(旧版)内の双子の言及

【嬰児殺し】より

…アフリカのサンは過酷な自然の中では生きていけないという信念で,身体に欠陥のある子を殺した。現代医学的には肉体的障害が認められなくても,出生時に歯のある子,逆子,双子等は異常児として殺害されることがあった。婚外の関係から生まれた子が殺されるケースも多い。…

【殺人】より

…妖術は不幸・災害の根源であり,その除去は社会の正当な自衛策にほかならない。また双子の誕生は異常な現象として天変地異の誘因になるものと恐れられ,その殺害が正当なものとされる場合も少なくない。またかつてJ.フレーザーが注目した〈王殺し〉の慣習も,殺人を正当化・義務化するものである。…

【多胎】より

…哺乳類の妊娠において,複数の胚が同時に着床して発生を進行している場合に多胎(双胎,三胎,四胎など)であるという。出産に至れば,双子,三つ子,四つ子などと呼ばれる。自然の生殖過程として多胎が生ずる場合と,一般に単一胚による妊娠が正常であると考えられる種に偶発的に生ずる場合とがある。…

※「双子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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