日本大百科全書(ニッポニカ) 「戦術攻撃」の意味・わかりやすい解説
戦術攻撃
せんじゅつこうげき
tactical attack
戦場の周辺で、戦闘の推移に直接関連する敵目標を攻撃すること。上空の制空・防空戦闘や、各種の対地・対艦攻撃なども含まれる。対地攻撃の内容としては、敵防空の制圧、対航空作戦、主要目標に対する精密誘導兵器による攻撃、航空阻止、戦場上空阻止、近接航空支援などがある。
敵防空の制圧は、地対空機関砲や地対空ミサイル陣地を攻撃・破壊するもので、兵器に対する直接攻撃のほか、管制・誘導レーダーを対レーダー・ミサイルで破壊して事実上無力化する攻撃などが行われる。対航空作戦は、航空機や飛行場、指揮統制施設、支援施設などを目標として、敵の航空戦力をそいで航空優勢の確保・維持を支援する。場合によっては戦略爆撃機も投入される。精密誘導兵器による攻撃は、重要な目標を確実に破壊する場合などに行われるが、近年では非戦闘員への被害回避の目的でも精密誘導兵器が用いられるようになっている。航空阻止は、敵の地上部隊を撃破・無力化・擾乱(じょうらん)・遅滞させるための攻撃で、輸送システムや補給源なども目標に入る。戦場上空阻止は、味方地上部隊と敵地上部隊の接点から味方側に向かっている、敵地上部隊の全縦深に対する阻止攻撃で、後続部隊も目標にする。近接航空支援は、地上部隊とより密接な連携をもって、味方地上部隊の戦闘行動を支援するために航空攻撃を実施することである。戦術攻撃は、多様な目標を攻撃するため、兵器もそれぞれに合わせた多種多様なものが用いられる。
[青木謙知]