日本大百科全書(ニッポニカ) 「戦略攻撃」の意味・わかりやすい解説
戦略攻撃
せんりゃくこうげき
strategic attack
前線での戦いとは別に、敵の後方にある軍事、政治、産業、経済などの組織を破壊して、国の体制を崩壊させるための攻撃。敵の主要目標を攻撃して、戦闘を続ける能力や意思をなくすために行う。主要目標には、政治・行政の中枢機関、通信連絡施設、情報施設、発電所、送電所、エネルギー供給施設、主要交通機関や道路網、主要物資の集積・貯蔵所、主要原材料の生産地、重要な工業生産施設などが含まれる。軍事関連では指揮中枢、補給施設、航空基地や軍港、部隊の集結地、集結兵団などが戦略目標となる。
第二次世界大戦中の、アメリカやイギリスの爆撃機によるドイツへの大規模爆撃や、アメリカの爆撃機や空母機動部隊などによる対日攻撃は、戦略攻撃の典型的なもので、前線での戦闘状況の推移とは直接関連をもたずに、戦争そのものの帰趨(きすう)を決することが目的であった。そして核兵器の実用化により、戦後は核保有国による戦略核攻撃力が、それらの国の世界戦略の柱になっている。
戦略核攻撃の手段としては、長距離の戦略爆撃機(核爆弾および核弾頭付き巡航ミサイルを携行)、大陸間弾道ミサイル、潜水艦発射弾道ミサイルが、三本柱として使われている。しかし、実戦での核兵器の使用は、第二次大戦以後は行われておらず、その後の戦争・紛争での戦略攻撃には通常爆弾や通常弾頭ミサイルが使われている。そして航空機の兵器搭載能力が高まったことで、以前は戦術攻撃にのみ使われていた攻撃機であっても、戦略目標を攻撃目標に定めて、戦略攻撃を行うことが可能になっている。
[青木謙知]