改訂新版 世界大百科事典 「手工業ギルド」の意味・わかりやすい解説
手工業ギルド (しゅこうぎょうギルド)
craft guild
ヨーロッパ中世都市内部に形成された手工業者の同職組合,とくにドイツではツンフトとよばれることが多い。商人ギルドにかわって,多くは14世紀に,同じ職業の手工業者の親方がそれぞれ共同の利益を守るため,対外的には営業の独占,対内的には相互の平等を基本とした組合を結成したもの。織布工ギルド,仕立屋ギルド,靴工ギルドなど生活必需品にかかわる職業について形成されることが多かった。親方,職人,徒弟という階層序列(徒弟制度)を含む中世の産業組織であり,都市に手工業を集中して生産を統制し,農村の手工業を禁圧した。一方,都市の自治にも重要な役割を果たし,とくに大陸ではいわゆる〈ツンフト闘争〉を経ることによって手工業ギルドが都市自治の基盤となった。しかし,その後内部に富裕層が形成されて寡頭化し,親方になれない職人の職人組合結成がみられ,また農村工業も出現したため,16,17世紀には変形した姿をとるが,ほぼ市民革命期に至るまで存続した。
→ギルド
執筆者:坂巻 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報