日本大百科全書(ニッポニカ) 「抗てんかん薬」の意味・わかりやすい解説
抗てんかん薬
こうてんかんやく
てんかんの治療に用いられる薬剤。てんかんは、けいれんと意識喪失とが反復して現れる慢性脳疾患で、てんかんによるけいれんを大発作、短時間の意識喪失を小発作といい、意識混濁、異常行動などの発現を精神運動発作という。したがって抗てんかん薬は、大発作、小発作、精神運動発作のそれぞれに用いられるものに分けられるが、同一薬剤で2種の発作に有効なものもある。
化学構造上は次のように分けられる。(1)フェナセミド系(アセチルフェネトライド、エチルフェネトライド、フェナセミド)、(2)ヒダントイン系(エトトイン、フェニトイン)、(3)オキサゾリジン系(トリメタジオン)、(4)バルビツール酸系(フェノバルビタール、メフォバルビタール)、(5)スルホンアミド系(スルチアム)、(6)スクシミド系(エトスクシミド)、(7)その他(カルバマゼピン、クロナゼパム、バルプロ酸ナトリウム)など。フェニトインとフェノバルビタールの配合は古くからてんかんの治療に繁用されている。睡眠薬のニトラゼパムもこの目的で応用される。てんかんの大発作にはフェノバルビタール、メフォバルビタール、メタルビタール、フェニトイン、エトトイン、プリミドン、小発作にはトリメタジオン、エトスクシミド、ニトラゼパム、クロナゼパム、バルプロ酸ナトリウム、精神運動発作にはスルチアム、フェナセミド、カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウムが用いられる。
[幸保文治]