改訂新版 世界大百科事典 「折檻死」の意味・わかりやすい解説
折檻死 (せっかんし)
death from chastisement
保護者ら(両親,その他の乳幼児の世話をする人)によって乳幼児が折檻・虐待されて死亡することをいう。近年,欧米のみならず日本においても,折檻あるいは無責任な放置により傷害・死亡する例が増加しており,医学的ならびに社会的な問題となっている。被害児(被虐待児battered child)のうち折檻死に至るものの平均年齢は4歳以下であって,とりわけ2歳以下の乳幼児が最も多い。加害者については実母(とくに20歳代)が最も多く,次いで実父,継母,継父の順である。折檻の原因としては,複雑な家庭環境,貧困,離婚,私生児,実母らの精神異常および子どもの発育遅延などがあげられる。そのほか,片方の親あるいは両親がアルコール常飲者のこともある。折檻死の原因となる損傷としては,頭蓋内損傷,ことに硬膜下出血(血腫)が最も多く,そのほか胸腹腔内臓器の損傷,たとえば肝臓,腸などの破裂がみられることもある。骨の損傷としては,頭蓋骨折,肋骨骨折および四肢の長管骨骨折などがみられる。
執筆者:龍野 嘉紹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報