折檻(読み)セッカン

デジタル大辞泉 「折檻」の意味・読み・例文・類語

せっ‐かん【折×檻】

[名](スル)《漢の孝成帝が、朱雲の強いいさめを怒り、朝廷から引きずり出そうとしたとき、朱雲が欄檻らんかんにつかまったため、それが折れたという「漢書」朱雲伝の故事から》
厳しくしかったり、こらしめの体刑を加えたりすること。「子供折檻する」
強くいさめること。厳しく諫言かんげんすること。
「をりをりの御―にてこそ候へ」〈謡・仲光
[類語]お仕置き見せしめ懲らしめるとっちめる罰する懲らす灸を据える焼きを入れる仕置きバッシング

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精選版 日本国語大辞典 「折檻」の意味・読み・例文・類語

せっ‐かん【折檻】

  1. 〘 名詞 〙 ( 前漢の朱雲が成帝を強くいさめてその怒りをうけ、朝廷から引きずり出されようとした時に、檻(てすり)につかまったため、その檻が折れたという「漢書‐朱雲伝」に見える故事から ) きびしく意見すること。きびしく叱ること。転じて、せめさいなむこと。こらしめの体刑を与えたりすること。切諫。
    1. [初出の実例]「父の責諫(セッカン)ありし後は再び来り給はず」(出典:三国伝記(1407‐46頃か)七)
    2. 「かたいぢなるとしより心に、女郎を、〈略〉かくまではせっかんするぞかし」(出典:評判記・たきつけ草(1677))

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故事成語を知る辞典 「折檻」の解説

折檻

過ちをきびしく指摘することのたとえ。転じて、責めさいなむことや、叱って体罰を加えることのたとえ。

[使用例] 親が子を折檻するに不思議があるか[徳冨蘆花黒潮|1902~05]

[使用例] 子供の見ている前で私をぶって、折檻して、私にどうしてもそうだといわせようとしました[石原慎太郎*化石の森|1970]

[由来] 「漢書しゅうん伝」に見える逸話から。紀元前一世紀の後半、ぜんかん王朝せいていは、自分の先生でもあるちょうばかりを重用していました。あるとき、その弊害を心配した朱雲という臣下が、成帝の前に進み出て、「媚びてばかりの大臣を一人、切り捨てたく存じます」と申し上げました。それはだれかと成帝が尋ねると、「張禹です」という答え。師匠を侮辱された成帝は激怒し、朱雲を引き出して死刑にせよと命じました。しかし、朱雲は「私の命よりも、わが王朝の行く末が心配です」と叫びながら宮殿手すりにしがみつき、「檻、折る(手すりが折れてしまった)」という事態に。結局、ある大臣の取りなしによって、成帝の怒りはしずまり、朱雲の処罰は取り消されたのでした。その後、成帝は折れた手すりをそのまま保存し、忠告してくれた朱雲への感謝の証としたそうです。

[解説] ❶わざとのように皇帝を激怒させ、死刑にされるのは覚悟の上。朱雲の激しい生き方が、折れた手すりに象徴されています。成帝は、それを見るたびに、きびしい調子で自分の過ちを指摘してくれた朱雲のことを思い出したのです。❷そこから、この故事成語は「過ちをきびしく指摘する」という意味になりました。「責めさいなむ」「体罰を加える」場合でも、相手のことを思う気持ちが大切です。

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普及版 字通 「折檻」の読み・字形・画数・意味

【折檻】せつかん

強く諫める意。〔漢書、朱雲伝〕雲、上書して見(まみ)えんことを求む。に在り。雲曰く、今、の大臣、~皆尸位(しゐ)素、~臣願はくは方斬馬劍を賜ひて、佞臣一人を斷(き)り、以て其の餘を(はげ)まさんと。~上(しやう)大いに怒る。~、雲を將(もつ)て下さんとす。雲、殿檻に攀(よ)ぢ、檻折る。

字通「折」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「折檻」の意味・わかりやすい解説

折檻
せっかん

厳しくしかったり、責めさいなむこと。原義は欄檻(手すり)を折るという意で、力をもって君主などを強く諫(いさ)めることをいった。中国、前漢の元地方官の朱雲が、成帝の師で安昌(あんしょう)侯となった姦臣(かんしん)張禹(ちょうう)を斬(き)るように上申したところ、帝は「官吏が上役をそしり、師傅(しふ)を悪くいうのは死にあたる罪だ」と、烈火のごとく怒った。しかし朱雲は屈することなく、彼を引き立てて連れ出そうとする役人を払いのけ、宮殿の欄檻によじ登り、これを折ってしまった。のちのちも帝はこの欄檻を直さず、朱雲の諫言(かんげん)の記念とした、と伝える『漢書(かんじょ)』「朱雲伝」の故事による。

[田所義行]

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世界大百科事典(旧版)内の折檻の言及

【折檻死】より

…保護者ら(両親,その他の乳幼児の世話をする人)によって乳幼児が折檻・虐待されて死亡することをいう。近年,欧米のみならず日本においても,折檻あるいは無責任な放置により傷害・死亡する例が増加しており,医学的ならびに社会的な問題となっている。…

※「折檻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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