押被(読み)おっかぶせる

精選版 日本国語大辞典 「押被」の意味・読み・例文・類語

おっ‐かぶ・せる【押被】

〘他サ下一〙 おっかぶ・す 〘他サ下二〙 (「おっ」は接頭語)
① 勢いよくかぶせる。物の上などをおおう。
多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「密々(ひそひそ)と聞えた声が、俄に何か掩被(オッカブ)せたやうにぱったり歇(や)むで」
② 罪や責任などを人に負わせる。なすりつける。
※滑稽本・六阿彌陀詣(1811‐13)初「惣領世話をすべきを、弟におっかぶせておくうへに」
③ (多く「おっかぶせて」「おっかぶせるように」の形で) 高圧的にふるまう。特に、相手言葉が終わるか終わらない内に、または相手が何も言わない内に、高圧的に発言する。
※雑俳・柳多留‐八(1773)「しゃば中にかりはないぞとおっかぶせ」
④ にせものを作ったりしてだます。よくないものを、いつわって買わせたり、押しつけたりする。
※雑俳・柳多留‐二一(1786)「おっかぶせられたといわにゃつり合ず」

おっ‐かぶせ【押被】

〘名〙
① かぶせること、特に、みっともない所をおおうため、外側を包むこと。〔東京語辞典(1917)〕
② まねたり、似せたりすること。また、そのもの。にせもの。まがいもの。
洒落本・弁蒙通人講釈(1780)自序「その太平記の剽竊(オッカブセ)、名づけて通人講釈といふ」
③ 他の劇場出し物と同じものを同じ土地で競演すること。
いんちきな品を売りつけたり、いいがかりをつけて押しつけたりすること。
※歌舞伎・櫓太鼓鳴音吉原(1866)六幕「喧嘩やおっかぶせ、押借りゆすりが高だから」

おし‐かぶ・せる【押被】

〘他サ下一〙 おしかぶ・す 〘他サ下二〙 (「おし」は接頭語)
① 上からおおう。かぶせる。
② 前のことばにすぐ続けて上に覆いかけるようにして言う。
※雪たゝき(1939)〈幸田露伴〉下「木沢は圧(オ)し被(カブ)せるやうに、『〈略〉貴殿にかかはった事ではござらぬ。〈略〉』と冷やかに且つ静かに云った」

おっ‐かぶさ・る【押被】

〘自ラ五(四)〙 (「おっ」は接頭語)
① ふさぐように物の上をおおう。
※雑俳・俳諧觿‐一四(1798)「おっかぶさりし鈴鹿明神」
② 好ましくないことが自分に及ぶ。
※白い壁(1934)〈本庄陸男〉一「こんな苦労がおっかぶさって来たんだから」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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