日本大百科全書(ニッポニカ) 「担子器果」の意味・わかりやすい解説
担子器果
たんしきか
担子菌類の繁殖器官(子実体)をいう。形成過程は、まず胞子から生じた単相菌糸体が菌糸接合を行って重相菌糸(菌糸細胞に単相の2核をもつ菌糸)が生じ、これが成長する。ついで、その上か、または重相菌糸体からなる菌糸束、もしくは菌核上に、環境変化が刺激となって子実体が形成される。子実体は植物体、腐植質等の基物内外にみられ、形態は膜状、棍棒(こんぼう)状、傘状、球状などで、硬いものや柔らかいもののほか、寒天質のものもある。大きさは1ミリメートル以下から30センチメートル以上とさまざまである。子実体形成後も、環境がよければ、基物内の重相菌糸体は成長を続け、年々、多数の子実体を生ずることができる。
子実体はいろいろの菌糸組織からなり、特定部位に菌糸末端細胞が並んで、担子胞子を生ずる担子器層(子実層)をつくる。この子実層には次の区別がある。(1)裸実性=子実層が初めから裸出して形成される。(2)偽(ぎ)被実性=子実体成長過程で子実層が一時的に覆われる。(3)半被実性=子実層が初めは裸出しないが途中から裸出する。(4)被実性=少なくとも胞子が成熟するまでは子実層を裸出しない。(5)内実性=胞子成熟後も子実層を裸出しない。このうち、内実性は地下生の腹菌類でみられ、その他は帽菌類などでみられる。
また、子実層の下には子実下層、子実層床などの菌糸組織がある。子実層床は子実層の土台となるもので、平滑か皺(しわ)状、針状、管孔状、ひだ状などがある。なお、子実体によっては、組織中に乳液、色素のほか、空気に触れると変色する物質を含むもの(異質菌糸)がある。
[寺川博典]