根を生ずる特殊器官を意味する植物器官学上の用語。植物では茎が地中にあって根に似たり、逆に根が地上にあって茎に似る場合も多いが、先端に根冠や葉原基があるかどうか、維管束の配列はどうか、母軸からの発生は内生的か外生的か、などの点に注意すれば根と茎の判別はつくものである。しかし、いくつかの植物には、これらの点を調べても判別しかねる器官がある。たとえば、クラマゴケの茎の分岐点から下垂する白くて細長い器官は、外生的発生をし、根冠も根毛もないという点では茎に似るが、葉をつけないし、維管束の配列をみると茎や根とも異なる。この器官は、地面に達すると先端付近から内生的に真の根を出すので、根を生ずる特殊器官ということで担根体とよばれる。古生代石炭紀に栄えた木生シダ植物のリンボク類の地下器官はスチグマリアとよばれ、二又分枝した太い根のようにみえるが、これも先端付近から根を出す担根体と考えられる。また、ヤマノイモのいもも一種の担根体と考えられてきたが、発生過程をみると、これは胚軸(はいじく)や茎の基部が異常成長したものである。
[福田泰二]
…茎に似た特徴を示すとされる器官がシダ植物にみられる。イワヒバ属の担根体やハナヤスリ科の担葉体などがその例である。前者の場合,担根体は茎の分枝点にできる芽から発生したあと根として下垂し分枝する。…
…気根のうち通気のために特別の構造をもつようになったものが呼吸根respiratory rootで,皮層に細胞間隙がよく発達したものなどがある。 イワヒバ科やミズニラ科には担根体rhizophoreとよばれる特殊な構造があり,根の変形とみられたり,茎の変形とみられたりする。茎の分岐点の腹側に伸び,屈地性をもつことと,内部構造については根とよく似ているが,茎から外生的に分出すること,根冠も根毛ももたないことなどでは茎と似ている。…
…単にヤマイモ,または英名にイモをつけてヤムイモともいわれる。 ヤマノイモ属Dioscorea植物は全世界の熱帯を中心に数百種が知られ,養分を貯蔵する地下茎や担根体あるいは葉腋(ようえき)に,むかごをつける。このため世界各地で数十種が食用として利用され,数種が重要な食用作物に育成されている。…
※「担根体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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