改訂新版 世界大百科事典 「数体」の意味・わかりやすい解説
数体 (すうたい)
number field
複素数全体の部分集合Kで,0以外の元を含み四則算法ができるもの,すなわち,Kの2元α,βに対し,α±β,αβ,α/β(β≠0)もKに含まれるものを数体という。有理数全体Q,実数全体R,複素数全体Cはその例である。有理数を係数とする代数方程式の根となる複素数を代数的数という。代数的数αに対し,αを根とする有理数係数の多項式の中で次数が最小のものが,最高次の係数を1とすればただ一つ定まる。この多項式をαの最小多項式といい,その次数をαの次数という。代数的数αの次数がnであるとき,Qにαを添加した体Q(α)はQ+Qα+……+Qαn⁻1となり,この数体Q(α)はまたQ上のn次元ベクトル空間ともみなせる。数体の中でQ上有限次元のベクトル空間とみなせるものはこのような形で与えられる。代数的数全体も数体であるが,これは,いわゆる無限次拡大体であって,上のような形では得られない。複素数であって,代数的数でないものを超越数という。自然対数の底eや円周率πは超越数である。超越数でQ上代数的に独立なものが無限に存在する。
執筆者:斎藤 裕
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報