日本大百科全書(ニッポニカ) 「斑点細菌病」の意味・わかりやすい解説
斑点細菌病
はんてんさいきんびょう
細菌の寄生によっておこる各種の作物の病気で、葉、茎、果実などに小さな淡褐色から褐色の斑点ができる。葉では葉脈に限られて角形の病斑になることもある。激しい発病のときは、病斑が融合して葉が枯れる。糸状菌の寄生による斑点病と異なり、病斑上に分生胞子や柄子殻など、いわゆる「カビ」の発生は認められないが、湿度の高いとき病斑の周囲に菌泥(きんでい)(細菌の塊)を膿(うみ)状に溢出(いっしゅつ)する。病原は作物の種類によって異なり、プソイドモナス属およびバークホルデリア属細菌によるものは、キュウリ、ダイズ、カーネーションなど18種の作物に発生する。このうちもっとも重要なものは、Pseudomonas syringae pv. lachrymansの寄生によるキュウリなどウリ類の斑点細菌病で、葉のほか果実にも発生し、とくにハウス栽培のもので被害が大きい。このほかP. syringae pv. glycineaによるダイズ斑点細菌病、Burkholderia andropogonisによるカーネーション斑点細菌病なども重要である。キサントモナス属細菌によるものは、トマトなど10種の作物で発生が知られているが、とくにXanthomonas campestris pv. vesicatoriaによるトマト、トウガラシ、ピーマンの斑点細菌病は、葉、茎、果実に発生し、経済的な被害が大きい。
[梶原敏宏]