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発生 はっせいdevelopment

翻訳|development

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

発生
はっせい
development

細胞生物の卵が受精し,胚を経て幼生成体となるまでの過程をいう。1個の細胞から規則正しい順序で複雑な体制をつくり上げる過程で,部分的退化をも含み,不可逆的な現象である。この過程は,卵に内在する能力に従って成長,細胞の分化形態形成などが行われる。また発生現象は,個体発生系統発生の2つに大別され,通常は前者をいう。

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デジタル大辞泉の解説

はっ‐せい【発生】

[名](スル)
物事が起こること。生じること。「熱が発生する」「事件が発生する」
受精卵胞子から、多細胞高次な状態へ不可逆的に変化・発展すること。個体発生をさす。

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百科事典マイペディアの解説

発生【はっせい】

広義には系統発生を含むが,ふつうには受精卵・種子・胞子などからその生物特有の親の状態になるまでの過程(個体発生)をさす。個体発生は原形質の量的増加,細胞数の増加および特殊構造への質的変化である分化という3基本過程の複合したものとみなすことができるが,動物の場合を例にとってその経過を追うと,1個の細胞としての受精卵は卵割によって多数の小細胞に分かれ,次いで胞胚嚢胚の段階を経て胚葉が形成され,各胚葉から種特有の器官が分化する。
→関連項目受精性同一性障害双生児多胎妊娠単為生殖卵片発生

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栄養・生化学辞典の解説

発生

 発育発達などと近い意味をもつ.受精後,細胞が分裂増殖して個体となる過程.

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世界大百科事典 第2版の解説

はっせい【発生 development】

個体発生,つまり多細胞生物における個体形成の過程。生物の体は受精(有性生殖)の結果として生じた1個の受精卵から,それぞれの種のもつ体制の複雑さに応じて,単純から複雑へと段階的に構築される。
【動物の発生】
 有性生殖の過程は単細胞生物にも存在するため,この過程を発生の概念には含めないとする考え方もある。しかし,無性生殖を併用する一部の無脊椎動物は例外としても,大部分の無脊椎動物およびすべての脊椎動物において,有性生殖の過程を経ずに新個体がつくられることはない。

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大辞林 第三版の解説

はっせい【発生】

( 名 ) スル
新しい物や事が生ずること。また、生じさせること。 「事件が-する」 「酸素が-する」
細胞の増殖・分化・形態形成などにより、ある生物系(組織・器官・個体など)が単純な状態から複雑な状態へ発展すること。主に受精卵から出発する個体発生をさす。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

発生
はっせい
development

生物学用語としての発生は、二つの異なった意味で用いられる。一つは、地球上に最初に現れた生命から、長い年代の間に現在みられるような多様な生命形態が生じてきた過程、すなわち生物種の歴史的な発生をいう。これを系統発生とよぶ。もう一つは、多細胞生物の生活環のなかで、1個の細胞から出発して個体がつくられるまでの過程、すなわち細胞が増殖し、おのおのが分化を遂げて、複雑な有機体である個体になるまでをいう。これを個体発生とよび、普通、単に発生といえばこちらをさす。以下、本項では個体発生について解説する。[木下清一郎]

発生の過程

個体発生は有性生殖によって始まるのが一般的な形式である。まず、個体の体内で生殖細胞が減数分裂を行って配偶子がつくられる。続いて受精が行われるまでは動植物とも同じである。動物では受精卵は卵割を繰り返し、生じた割球は中空の球状体となる。これが胞胚(ほうはい)である。やがて細胞集団の中で形態形成運動がおこって原腸が陥入をおこし、胞胚は内部に折り畳まれ、二重の壁をもった胚となる。これが嚢胚(のうはい)(原腸胚)である。このころには胚細胞は三つの集団を形づくり、それらは外・中・内胚葉とよばれる。各胚葉は将来それぞれ特定の器官や組織となるよう決定されている。たとえば、外胚葉は体の外表面を覆って皮膚やその付属物をつくるほか、神経系などをつくる。中胚葉は筋、心臓、腎臓(じんぞう)、内部骨格、間充織などとなる。内胚葉は胃、腸などの消化管とこれに付属する肝臓、膵臓(すいぞう)などの消化腺(せん)をつくる。これらの過程は動物の種類が違えばすこしずつようすが違うが、基本的には共通である。
 種子植物でも受精卵が出発点となることは同じであるが、受精卵が分裂して幼芽・幼根・子葉をもった胚が種子中につくられ、いったん休眠する。発芽すると植物体の成長は茎や根の先端などに局限して行われる細胞分裂による点が、動物と大きく違っている。[木下清一郎]

発生の機構

個体発生では細胞の増殖と分化が大きな役割を果たしている。発生が進行するにつれて細胞数は増えていくが、ある限度に達すると増殖は止まり、器官や組織はつり合いを保って、全体としてある大きさを保つ。個体の中では細胞の増殖はある制限を受けているためであるが、この制限の本質については現在でもよくわかっていない。また、胚の中にさまざまの組織が生じ、これが秩序正しく配列して個体となる過程を細胞の分化といい、発生の仕組みのなかではもっとも基本的な事柄である。細胞は本来さまざまの形質を発現する能力をもっているのであるが、個体の中で組織をつくっている細胞は、ある形質のみを選んで発現し、その結果、脳、筋、肝臓などの性質を表していると理解されている。このように、個体の中では細胞の増殖と分化とはある制限を受けている。この制限があって初めて個体が成り立っているともいえる。発生とは胚の中で細胞の増殖と分化を秩序だてて制限していく過程である。また、個々の細胞が生命をもっているうえに、個体は個体としての高次の生命をもっているわけであるが、個体の生命とはとりもなおさず細胞の能力を制限する力であって、発生とは細胞の生命を個体の生命に高めることである。
 胚の中ではある組織がほかの組織に働きかけて、その結果として細胞分化がおこるという過程が次々に連なっている。この現象を誘導とよぶ。たとえば、両生類などでは、嚢胚ができる際に内部に陥入した原口背唇とよばれる部分が、外側に残っている外胚葉の一部を裏打ちして、その部分の外胚葉を神経組織に分化させる(第一次胚誘導)。続いて頭部では神経化した組織が脳となり、その一部が目となり水晶体や角膜を備えるようになる。これらはいずれも誘導の連鎖と考えられている。胚の中ではさまざまの誘導がおこりながら複雑な体制がつくられていく。[木下清一郎]

発生の諸変異

このように細胞の増殖と分化とが巧みに調和しつつ胚をつくりあげていく過程が発生であるが、発生の基本的な仕組みは実は個体がつくられたのちにも働き続けている。たとえば、けがをすると、それまで休止していた増殖の働きが動きだし、元の形をつくりあげるように細胞が分化してふたたび休止する。これが再生であって、動物によって能力に程度の差があり、イモリのように肢(あし)1本を再生できるものから、ヒトのように傷を治すぐらいまでのものまである。再生は成体での部分的な発生のやり直しとみることができる。
 個体の中で細胞増殖の調節が働かなくなり分化にも異常をきたしたものとして癌(がん)をみようとする研究者がある。これもやはり個体の中で発生の仕組みが働き続けているとする立場であって、癌を発生の失敗とみるわけである。また、個体が成体になるまでに幼生の形を経ることがある。この際には体制に激烈な変化(変態)がおこる。これは、発生の一種の繰り返しともみることができる。[木下清一郎]
『I・B・バリンスキー著、林雄次郎訳『発生学』(1969・岩波書店) ▽J・D・イバート著、岡田瑛・岡田節人訳『発生――そのメカニズム』(1967・岩波書店)』

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