新太平洋構想(読み)しんたいへいようこうそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「新太平洋構想」の意味・わかりやすい解説

新太平洋構想
しんたいへいようこうそう

汎(はん)太平洋構想または環太平洋構想ともよぶ。南北アメリカ大陸西部海岸からオーストラリア、ニュージーランドを経て、インド大陸諸国ビルマ(現ミャンマー)を含む東南アジア、中国、朝鮮半島、日本に至る太平洋周辺諸国は、世界人口の3分の2以上を占め、資源も工業潜在力も豊かなところから、1969~70年ごろから、ベトナム戦争後を見すえて、アメリカ財界を中心ににわかに未来の世界経済戦略の中核として浮かび上がった開発構想。機関誌として『Pacific Basin Report』を刊行し、アメリカを中心に関係諸国に対応委員会も生まれた。この構想の根底には、世界経済活動の中心が米欧から太平洋周辺に移るとの展望があったが、その後、メキシコチリなどの累積債務、ラテンアメリカ諸国の経済発展の停滞、中国の沿岸地域の工業化、ベトナムを含むASEAN(アセアン)諸国の経済的急成長、アメリカ自身の財政・貿易赤字の増大など、太平洋周辺諸国の経済的格差の著しい拡大などのために、この構想はもはや論議されなくなりつつある。

陸井三郎

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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