日田郡
ひたぐん
面積:三九六・九八平方キロ
上津江村・中津江村・前津江村・大山町・天瀬町
大分県の西端部を占める。東は玖珠郡玖珠町および熊本県阿蘇郡小国町・同郡南小国町、北は日田市、北から西にかけては福岡県浮羽郡浮羽町・八女郡星野村・同郡矢部村、南は熊本県鹿本郡菊鹿町・菊池市と接する。郡北東部は万年山(一一四〇・二メートル)・鏡山(六七四・六メートル)などの形成する台地が続き、その谷間を西流する玖珠川は郡南部から北流する大山川と日田市域で合流して三隈川となり、筑後川の上流となっている。南部は大山川支流の水源となる尾ノ岳(一〇四〇・七メートル)・三国山(九九三・八メートル)など、西部は猿駈山(九六八メートル)・釈迦岳(一二三〇・八メートル)・権現岳(一二〇九メートル)などがそびえる。JR久大本線・国道二一〇号が天瀬町域の玖珠川沿いに通り、大山町は国道二一二号、上津江村は同三八七号、中津江村は同四四二号などで結ばれる。玖珠川流域は耶馬日田英彦山国定公園に含まれる。
旧郡域は現日田郡の北に続く日田市を含み、その郡域に大きな変化はなかったと考えられる(ただし長尾野村は明治二二年に下毛郡に編入)。東は玖珠郡、北は豊前国下毛郡・田川郡、西は筑前国上座郡、筑後国生葉郡・上妻郡、南は肥後国山鹿郡・菊池郡・阿蘇郡と接していた。郡名の表記は日田が多いが、日高(「和名抄」高山寺本)・比多(国造本紀)・肥田(「八幡愚童訓」など)とする例もある。
〔原始〕
中心部の日田盆地以外は山がちの地形であるため、遺跡は縄文時代までは市の周辺部に、弥生時代以降は農耕に適した盆地周辺に集中する。旧石器時代の遺跡には天瀬町の五馬台地の福島遺跡・五馬大坪遺跡のほか、日田盆地周辺では、日田市の長者原遺跡・平野遺跡・萩尾遺跡・田代遺跡などがある。縄文時代ではとくに天瀬町五馬地区周辺に豊富な遺跡が分布する。平草遺跡では早期・前期を主体とする土器が出土し、竪穴状遺構や集石遺構が発掘された。ほかに早期の押型文や塞ノ神式土器、中期の船元式土器の出土する烏ヶ塚遺跡なども知られる。日田盆地周辺では後期の多彩な土器を出土する日田市の川下遺跡や長者原遺跡があり、大山町・前津江村境に近い曾家地区の山地は黒曜石原石の産地として知られる。弥生時代の代表的な遺跡日田市の吹上遺跡では多数の竪穴住居跡・袋状竪穴・組合せ式石棺などの遺構が発掘され、その時期も弥生時代前期から古墳時代に及ぶ。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
Sponserd by 