改訂新版 世界大百科事典 「早戻り機構」の意味・わかりやすい解説
早戻り機構 (はやもどりきこう)
quick-return motion mechanism
往路はゆっくり動き復路は早く動く機構。図のように,ピストン・クランク機構において,ピストンの運動する直線がクランクの回転中心からずれているような場合,クランクが等速で回転しても,ピストンでは左方向へ動く時間(図においてクランクがαだけ回る間)と右方向へ動く時間(クランクがβだけ回る間)とが異なる。これを利用すると,仕事を行う方向へはゆっくり動き,仕事をしない復路をすばやく戻るようにできる。このような偏心したピストン・クランク機構以外にも,種々の早戻り機構が存在し,ピストン・クランク機構において連接棒を固定すると揺動すべり子・クランク機構が得られ,これも早戻り機構として用いることができる。早戻り機構は形削り盤などで切削方向へはゆっくり動き,戻りは早く行って加工能率を上げる場合などに利用される。
執筆者:三浦 宏文
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報