日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピストン」の意味・わかりやすい解説
ピストン(機械部品)
ぴすとん
piston
シリンダー内を往復運動し、流体の圧力を受けて機械的エネルギーに変換するか、加えられた機械的エネルギーにより流体に圧力を加えたり膨張させたりする円板状または円筒状の機械部品。注射器もシリンダーとピストンで構成される器械である。ピストンは往復動内燃機関、蒸気機関の出力変換部の主要部分であり、また各種の往復動ポンプ、圧縮機の主要部分でもある。ピストンとシリンダーの間は普通はリング(ピストンリング)を入れ、漏れを防止する。とくに内燃機関などでは自己張出し式のピストンリングを用いて高圧ガスの漏れを防止している。またとくに高圧を必要とするポンプなどでは精密に仕上げたシリンダーとピストンを直接接触させて漏れを防止する。ピストンの形状は用途に応じて異なるが、機能上次の三部分からなる。(1)ヘッド部 流体の高圧を受けるピストンの天井で、高温ガスと接触する場合には材質、形状にとくに注意してつくられている。(2)リング部 2~4本程度のリングをピストンの溝にはめ込んだ部分。ピストンとシリンダー間の気密を保ち、ピストンが高温にさらされるときは、ピストンの受けた熱をシリンダーに伝える役割を担う。また潤滑しているときには、過剰な潤滑油をかき落とす。(3)スカート部 ピストンの側圧を支える部分。ピストンピンにより側圧の加わる方向が限定されているときは、その方向にスカートを長くし、それと直角の方向はスカートを省略することもある。
[吉田正武]
ピストン(Walter Piston)
ぴすとん
Walter Piston
(1894―1976)
アメリカの作曲家。ハーバード大学音楽学部を卒業後パリに留学(1924~26)し、デュカース、ナディア・ブーランジェに作曲を学ぶ。帰国後、母校で教鞭(きょうべん)をとり、バーンスタインらの後進を育てた。新古典主義的作風を示し、主要作品に、八曲の交響曲、バレエ曲『不思議な笛吹き』(1938)、ビオラ協奏曲(1957)など。また音楽理論書『和声学』(1941)、『対位法』(1947)、『管弦楽法』(1955)などは教科書として広く用いられている。
[寺田兼文]
『戸田邦雄訳『管弦楽法』(1967・音楽之友社)』