仕事(読み)しごと

精選版 日本国語大辞典 「仕事」の意味・読み・例文・類語

し‐ごと【仕事】

〘名〙 (「し」はサ変動詞「する」の連用形から)
① すること。したこと。しなくてはならないこと。しわざ。また、からだを動かして働くこと。作業。
※遣送本近代秀歌(1209)「これは面白く見所あり、上手しごととみゆ」
※とはずがたり(14C前)二「善勝寺大納言、故なく剥がれぬる事、さながら父の大納言がし事やと思ひて深く恨む」
滑稽本浮世風呂(1809‐13)前「父(とっ)さんが仕事(シゴト)をしかけて、今っから店(たな)へ行なさるって」
② それによって生計をたててゆくための職。職業。業務。
日葡辞書(1603‐04)「Xigoto(シゴト)。〈訳〉つとめ、奉公また、手作業など」
※安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉二「七八年もすぎたら製茶養蚕がさかんになって老少婦女子(をんなこども)のよい職業(シゴト)さ」
③ 事をかまえて、ふつうでない行動をおこすこと。また、悪事を働いたりたくらんだりすること。
歌舞伎お染久松色読販(1813)中幕「せっかく仕事をしかけたも、アノ死人を玉にして、大きな金をゆすり出すか」
※片棒かつぎ(1950)〈井伏鱒二〉「たぶん犯人は、まっすぐに金庫のある部屋にはひって行き、素早いところ仕事をしたものだらう」
④ 針仕事。裁縫。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「教たらちっとづつ縫物(シゴト)も出来やうと思ったが」
⑤ 力学で、ある物体に力を作用させその位置を移動させること。その量は力の大きさと動いた距離との積であらわされる。単位はエルグ、またはジュール
[語誌](1)「仕事()」という表記は既に室町時代中期の「文明本節用集」に見られるが、江戸時代の辞書には「為事」もあり、まだ表記が安定していなかった。明治時代以降になって、「仕事」にほぼ統一されるが、「仕」の字音シを借用した当て字表記と見られてきた。しかし、和語の漢字表記に「仕」が利用されていることは、「仕事」に限らず、「仕打ち」「仕立て」「仕舞う」といった語にも見ることができる。また、江戸時代の雑俳からはサ変動詞「する」の漢字表記に「仕る」が利用されている例を多く拾える。したがって、字音シの借用と見ることには問題がある。
(2)仕事の内容が様々なところから、近世から近代にかけての文献には、②④の例にもあるように、「職業(しごと)」「縫物(しごと)」「裁縫(しごと)」など漢字表記によって意味を明確にする方法が採られることがあった。

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デジタル大辞泉 「仕事」の意味・読み・例文・類語

し‐ごと【仕事】

[名](スル)《「し」はサ変動詞「」の連用形。「仕」は当て字》
何かを作り出す、または、成し遂げるための行動。「やりかけの仕事」「仕事が手につかない」
生計を立てる手段として従事する事柄。職業。「将来性のある仕事を探す」「金融関係の仕事に就く」「週の半分は自宅で仕事する」
したこと。行動の結果。業績。「いい仕事を残す」
悪事をしたり、たくらんだりすること。しわざ。所業。「掏摸すりが集団で仕事をする」
《「針仕事」の略》縫い物。裁縫。
「お前急に一つ―をしてくれんか」〈紅葉多情多恨
力学で、物体が外力の作用で移動したときの、移動方向への力の成分と移動距離との積。単位はエネルギーの単位ジュール、その他ワット秒・ワット時など。
[下接語]遊び仕事・荒仕事・請負仕事・お役所仕事片手仕事片手間仕事下仕事力仕事賃仕事手仕事出仕事手間仕事殿様仕事庭仕事野良仕事針仕事日仕事ひと仕事水仕事もうけ仕事っ付け仕事山仕事仕事
[類語]職業生業なりわい商売家業ビジネス作業勤め労働労作労務役務えきむ労役ろうえき操業業務働く
[補説] 
2015年に実施した「あなたの言葉を辞書に載せよう。2015」キャンペーンでの「仕事」への投稿から選ばれた優秀作品。

◆なんだかんだ言って生き甲斐だったりする。
ハルヲさん

◆あらゆる場面で使われている「言い訳ネタ」の王道。
陽一郎タニーさん

◆ブラックでも駄目、ムショクでも駄目。
ハルクマさん

◆自分、あるいは家族のために頑張るもの。ただし、時には家族との大切な時間をも犠牲にしてでも頑張らないといけないもの。
しゃけ缶さん

◆やればやるほど増えるもの。
のびたさん

◆終わりが待ち遠しくて、始まりは憂鬱なもの。
すぅさん

◆自分でやろうと決めた行動。その意味では自発的なものだけでなく、指示された内容も含む。福沢諭吉は世の中で一番楽しく立派なことは一生涯を貫く仕事を持つことであるとしている。
かぁじぃさん

◆社会の中での自分の「役割」を見つけ、同時に自分の「志」を実現する手段。
rakuhitoさん

◆与えられると窮屈になるもの。みずから掴み取るとワクワクとしてくるもの。
みままさん

生きがいでもあり、生きる糧を得るための手段でもあり、己を見つめ直すための修行でもある、人としての真っ当な営み。
ばってら子さん

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改訂新版 世界大百科事典 「仕事」の意味・わかりやすい解説

仕事 (しごと)
work

力学の範囲で物体が外力Fを受けてr1の位置からr2まで移動したとき,

なるスカラー量を外力Fが物体に対してなす仕事と定義する。ただし,ここでXYZFxyz方向成分である。物体に力を及ぼしてもその物体が動かなければ(人間にとって)何の利益をも生み出さないという事実から,ガリレイの時代に仕事の概念が生まれた。すなわち,てこ,輪軸,滑車などの機械を用い,小さい力を大きくすることはできるが,そのためにはそれに反比例して着力点を大きな距離だけ動かさねばならず,いかなる装置を用いても両者の積である仕事を得することはできない。一度動かせば永久に動いて仕事をする機械は第1種の永久機関と呼ばれ,人類の夢であったが,力学の範囲のみならず電磁的,熱的な現象も含めて永久機関が存在しないことが19世紀に確立した。

 物体(質点)の運動がニュートン運動方程式に従う場合,上に述べた永久機関が存在しえないこと,すなわち仕事を無際限に作り出すことはできないことは,外力Fによって質点になされる仕事,は,この質点のr1からr2への運動において獲得する運動エネルギーの増加分に等しいという(力学系の)エネルギー保存則で表現される。例えば,一定水量を用いて水力発電を行う場合,発電ののち,使った水で再度発電を繰り返そうとするならば,いったん得られた電力と等価な労力を用いて,その水を再び高い位置に戻さなければならない。この事実から仕事がエネルギーの一形態であることがわかる。とくに力Fr)がスカラー関数(ポテンシャル関数)のこう配(グラディエント)-∇Ur)に等しい場合,この力Fは保存力と呼ばれ,(1)式の仕事Wr1r2における位置エネルギーUr)の差,Ur1)-Ur2)に一致する。したがって,時間の逆転により質点がr2からr1へ運動すれば,ちょうど-Wの仕事が質点になされる(質点は外力に抗して外部にエネルギーWを供給する)こととなり,ハミルトン力学系の可逆性を示す一般的な特徴である。

 Frのみならず速度v(==dr/dt)にも依存する場合の仕事について一言しよう。質量m,電荷eの荷電粒子が電場以外に磁場Bを受けて運動する場合,と表されるが,この場合,を作ると磁場Bによる寄与は(v×B)・dr=(v×B)・vdtより0となるので,磁場は質点(荷電粒子)に対し仕事をしない(この場合はハミルトン系に準ずるとみなされる)。次にFがポテンシャル性保存力以外に減衰項を含む場合,

となり,の中に時間反転によって符号を変えない部分が含まれ,ハミルトン系の場合のような仕事の可逆性は失われる(事実,運動方程式(2)を導くハミルトン関数は存在しない)。この場合の仕事概念は,摩擦力によるようなエネルギーの消耗現象を含み,熱概念を含めなければエネルギー保存は理解されない。具体的には,方程式(2)の右辺の示す力に,さらにゆらぎを表す項を補った適当なランジュバン方程式によって,初めて熱の発生とそれを含めた形でのエネルギー保存則を表現することができる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「仕事」の意味・わかりやすい解説

仕事
しごと

運動の法則によれば、力が物体に作用するとその速度を変化させる。ベクトルとしての力を各瞬間ごとに、物体の運動の方向(速度の方向)の成分Ftとそれに垂直な成分Fnとに分けて考えると、Ftは速度の大きさ(速さ)を変え、Fnは速度の方向を変える働きをもつ。力の方向と速度の方向との間の角をθとすると、FtFcosθと表されるので、θが90度より小さければこれは正になって物体を加速し、大きければ負になって物体を減速する(参照)。ある時間力を加え続けたときの効果は、Ftと物体の動いた距離の積で表される。Ftが一定でないときには、物体の軌道を細分して、短い区間ごとにそのときのFtと動いた微小距離dsの積を求め、それを加え合わせれば(積分すれば)よい。これを力が物体にした仕事とよぶ。

 運動方程式を用いると、物体に働くすべての力の合力のする仕事は、物体のもつ運動エネルギーの変化分に等しいことが導かれる。物体の質量をm、軌道上のA点とB点における物体の速さをVAVBとすると、AからBまでの間に力のした仕事は

となる。

 物体にいくつかの力が働いているときには、合力だけでなくそれぞれの力についての仕事を考えることができる。たとえば地上で物体を手で持ち上げたり運んだりするときには、手が物体にする仕事と、重力が物体にする仕事とを合計したものが、運動エネルギーの変化高に等しい。手でゆっくり持ち上げるとき、手は正の仕事をしているのに運動エネルギーが増さないのは、同時に重力が負の仕事をしているからである。鉛直上向きにz軸をとると、A点からB点までの間に重力のする仕事は、重力加速度をgとして、mgzAmgzBと表され、Bのほうが高ければこれは負になる。手が物体にした仕事とこれとの和が運動エネルギーの変化高に等しいが、ゆっくり持ち上げて置いた場合にはVAVBも0なので、結局手のした仕事はmgzBmgzA(>0)に等しい。mgzを重力の位置エネルギーとよぶと、手のした仕事は(運動エネルギーの増加にはならずに)位置エネルギーの増加に費やされたことになる。

 仕事は力の大きさと距離の積なので、その単位は、力の単位(N=kg・m/s2)と長さの単位mの積kg・m2/s2で表され、これをジュール(記号J)とよぶ。仕事の単位はエネルギーの単位と一致する。力に重力単位の重量キログラム(記号kgfまたはkgw)を用いると、仕事の単位はkgf・mとなる。1kgf・m=9.80665Jである。

[小出昭一郎]


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化学辞典 第2版 「仕事」の解説

仕事
シゴト
work

ある物体に力F(FxFyFz)がはたらき,その物体がΔSx,Δy,Δz)だけ動いたとする.力Fの大きさをF,ΔSの大きさをΔS,二つのベクトルの間の角をθとする.このとき,

ΔWFxΔxFyΔyFzΔzFΔS cos θ

をその力が行った仕事という.θ < π/2のときはΔW > 0で,その力は正の仕事を行ったといい,θ = π/2のときはΔW = 0で力は仕事をしていない.θ > π/2のときはΔW < 0で,力は負の仕事を行った,あるいは物体が力に逆らって仕事したという.物体にいくつもの力 Fi(i = 1,2,…)が作用しているときは,そのベクトル和を上のFと考えてよい.すなわち,

F = Σ Fi

1 N の力がはたらき,物体がその方向に(θ = 0)1 m 動くとき,その力が行った仕事は1 J である.

1 J = 107 erg
である.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「仕事」の意味・わかりやすい解説

仕事
しごと
work

f を受けて物体が s だけ移動するとき,それらの内積を力のした仕事 w といい,wfsfs cos θ で表わす。 θ は fs のなす角,fs はベクトル fs の大きさである。保存力だけが働くときには,ある系に力がなした仕事はその系の力学的エネルギーの増加に等しい。仕事はエネルギーと同種の物理量で,そのSI単位はジュールである。他の仕事の例には次のようなものがある。圧力 p によって物体の体積が v だけ増せば,圧力がなした仕事は pv である。電流 I アンペアが電気回路中の l ワットの負荷 (電灯,テレビ,冷蔵庫,電熱器,モータなど) に t 秒間流れるとき,電流がなす仕事は lt ワット秒である。

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日本文化いろは事典 「仕事」の解説

仕事

日本には独自の文化の中で生まれた様々な職業があります。その種類・内容は多岐におよんでいます。長い歴史の中で、途絶えてしまった職業もありますが、現在でも受け継がれている仕事もたくさんあります。それらは昔からの伝統やしきたりを重んじ、厳しい 修行を経て一人前になるといったものがほとんどです。現在のように文明が発展していなかった時代から受け継がれている仕事は、現代技術をもってしても及ば ない「先人の知恵」がふんだんに活かされています。一方、近年ではこれら伝統的な職業に従事している職人の高齢化が進み、職人の道を志す若者が減少している事が問題視されています。日本文化の西洋化に伴い、職人の活躍する場が少なくなっている事が理由の一つと考えられています。日本文化いろは事典では、仕事を「い」特徴、「ろ」歴史・起源、「は」技術・内容・しきたり、などといった内容でご紹介していきます。

出典 シナジーマーティング(株)日本文化いろは事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の仕事の言及

【グルジェフ】より

…1912年からロシアで自身の秘教組織を構築し,20年代にはヨーロッパに渡って名を知られる存在となった。彼の教義は,人間を束縛する古い思考と感情を投げ捨てて高次の霊的自由を達成しようとするもので,それを実現するために〈ワークwork〉と呼ばれるシステムを提示した。重力と陋習(ろうしゆう)から肉体と精神を解放していく行法が含まれ,全体として今日の精神医学にいう集団療法,芸術療法を加えた西洋的禅が目ざされた。…

【労働】より

…社会的存在としての人間が,その生存を維持するために行う活動を,生産と消費に大別することができるとすれば,生産を支える人間の活動が広義の労働であるといえよう。しかしこれはかなり一般化したとらえ方であり,この語の伝統的な用法の中では〈労働〉は〈仕事〉としばしば対置して使い分けられ,それは英語におけるlaborとworkの使い分け方にほぼ一致している。前者は多少とも労苦をともなう活動のニュアンスを,後者は多少とも積極的な成果を展望する活動のニュアンスをもって用いられるといえよう。…

【エネルギー】より

…英語ではエナージーenergyという。
【エネルギー概念の発展】

[仕事と力学的エネルギー]
 エネルギーの概念が確立したのは19世紀後半であるが,これと深いかかわりをもつ仕事の概念の歴史はずっと古く,すでに紀元1世紀ごろ,アレクサンドリアのヘロンは,てこや滑車などの機械による仕事について,力に関する利得が速さまたは移動距離に関する損失で帳消しにされるということを述べている。これは現在仕事の原理と呼ばれるもので,詳しくいうと次のようになる。…

※「仕事」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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