改訂新版 世界大百科事典 「星像テスト」の意味・わかりやすい解説
星像テスト (せいぞうテスト)
天体望遠鏡の光学検査のうち望遠鏡現場で直接星像を見て行うテスト。星の光は平行光束だが,大口径の望遠鏡では地球大気のゆらぎによる光束の乱れが問題になるので,長時間にわたってゆらぎを平均化することが必要である。星の焦点像を高倍率の接眼鏡で見るか,写真に撮って調べればよいわけだが,わずかに焦点からずらして焦点内外像を比べるほうが感度がよい。球面収差があるとボケが焦点内像と外像とで対称でなくなる。非点収差があると像ののび方が内外像で90度回る。この場合には光軸調整に問題のあることが多い。光学系の状態を定量的に調べるにはハルトマン検査を行う。これは実験的に光線追跡を行う方法で,望遠鏡の入射瞳のところに多くの円孔を開けたハルトマン板を置き,焦点の内外で2枚の写真を撮る。星からの光は各円孔のところだけを通り光学系によって収束し,焦点を通った後はまた発散する。光学系が無収差ならば2枚の写真は互いに相似でかつ元のハルトマン板と相似になる。収差があると鏡面の各場所で光線の偏角が理想値と異なり焦点内外での対称性がくずれるから,これを測定して光線の収束状態を知ることができる。
執筆者:山下 泰正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報