曾我廼家劇(読み)そがのやげき

改訂新版 世界大百科事典 「曾我廼家劇」の意味・わかりやすい解説

曾我廼家劇 (そがのやげき)

曾我廼家五郎(1877-1948)と曾我廼家十郎(1869-1925)によって始められた喜劇の名称。もと2人は歌舞伎の下級俳優だったが,歌舞伎に見切りをつけた五郎が大阪千日前の改良座で見た鶴屋団十郎の〈改良俄(にわか)〉(にわか)に触発され,廃業していた十郎を誘って笑わせる芝居を目ざして1903年に〈新喜劇〉の一座を結成した。これは日本で初めて〈喜劇〉の語を冠した一座であったが,やがて曾我兄弟にちなんで両名とも曾我廼家姓を名のり,04年2月,大阪浪花座で日露開戦に材を集めた五郎自作の《無筆の号外》をもって曾我廼家兄弟一座を旗揚げした。この大当りから初期の松竹の目にとまり,関西一円から東京にも進出した。その成功から多くの同様の喜劇団が生まれたが,そのような中で,曾我廼家一座は代表的な喜劇団として定着した。芸風の違いから15年には五郎一座と十郎一座に分裂したが,両者とも教訓的な義理人情劇を主流とし,俳優が脚本をも書いたことから即興性が強かった。現在の松竹新喜劇もこの系譜といえる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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