曾我廼家十郎(読み)そがのやじゅうろう

精選版 日本国語大辞典 「曾我廼家十郎」の意味・読み・例文・類語

そがのや‐じゅうろう【曾我廼家十郎】

  1. 喜劇俳優。本名大松福松。筆名和老亭倉三、同当郎。伊勢三重県)松坂出身歌舞伎出身。明治三七年(一九〇四曾我廼家五郎に誘われ、曾我廼家劇創立参画。大正四年(一九一五五郎と分かれて一座を組織したが、間もなく病没した。明治二~大正一四年(一八六九‐一九二五

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朝日日本歴史人物事典 「曾我廼家十郎」の解説

曾我廼家十郎

没年:大正14.12.4(1925)
生年:明治2.4.16(1869.5.27)
曾我廼家喜劇の創始者。伊勢(三重県)松阪の合羽屋の家に生まれ,本名,大松福松。明治33(1900)年,歌舞伎役者3代目中村歌六の弟子となり中村時代を名乗る。36年,おなじ一座にいた中村珊之助と共に曾我廼家兄弟劇を結成。時代は曾我廼家十郎,珊之助は曾我廼家五郎を名乗った。日露開戦に当てこんだ喜劇「無筆の号外」を道頓堀浪花座で上演して大当たりをとり,上方喜劇の基礎を確立した。大正3(1914)年,五郎と袂を分かち曾我廼家十郎劇を主宰,俄の味を残した奇抜な脚本と飄々とした芸風で人気を博した。弟子にお婆さん役を得意とした曾我廼家十吾があり,また2代目渋谷天外にも大きな影響を与えた。<参考文献>渋谷天外『わが喜劇』,桜井祐吉『松阪文芸史』,『三重県紳士録』,春陽堂版『日本戯曲全集』(現代篇3輯)

(三田純市)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「曾我廼家十郎」の意味・わかりやすい解説

曾我廼家十郎
そがのやじゅうろう

[生]明治2(1869).2. 伊勢松阪
[没]1925.11.4. 大阪
喜劇俳優,劇作家。本名大松福松。筆名和郎亭当郎。初め歌舞伎の下回り役者だったが,中村珊之助 (のちの曾我廼家五郎) と 1904年道頓堀の浪花座で曾我廼家喜劇を興した。ヨーロッパから帰国して平民劇団を興した五郎と分袂して,15年十郎一座を組織。「衛生劇」の看板で東京有楽座で旗揚げ,好評のうちに両劇団競演が続いたが,21年有楽座の開演中に倒れ,引退。濃厚な五郎と対照的に淡泊,洒脱な演技で知識層に受けた。脚本も書き,代表作に『五万円の狐』がある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「曾我廼家十郎」の解説

曾我廼家十郎 そがのや-じゅうろう

1869-1925 明治-大正時代の喜劇俳優。
明治2年4月26日生まれ。はじめ歌舞伎で中村時代(ときよ)と名のった。のち役者仲間の中村珊之助(さんのすけ)(曾我廼家五郎)にさそわれ,明治37年曾我廼家兄弟劇団を結成,十郎と改名する。大正3年五郎とわかれ一座をつくる。軽妙な笑いで知られた。大正14年12月4日死去。57歳。伊勢(いせ)(三重県)出身。本名は大松福松。筆名と号は和老亭当郎。脚本に「五万円の狐(きつね)」など。

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世界大百科事典(旧版)内の曾我廼家十郎の言及

【松竹新喜劇】より

…旗揚げは1948年12月,大阪の中座で,以後もそこを本拠として活動し現在に至っている。旗揚げのプログラムは茂林寺文福(もりんじぶんぷく)こと曾我廼家十吾(そがのやとおご)(1892‐1974)と館直志(たてなおし)こと渋谷天外合作《丘の一本杉》,和老亭当郎(わろうていとうろう)こと曾我廼家十郎作《手》,一堺漁人(いつかいぎよじん)こと曾我廼家五郎作《嵯峨野の雪》ほかであった。参加メンバーには渋谷天外,曾我廼家十吾,浪花(なにわ)千栄子(1907‐73),藤山寛美(かんび)(1929‐90),曾我廼家大磯,曾我廼家明蝶(めいちよう),曾我廼家五郎八,曾我廼家鶴蝶(つるちよう)らがいる。…

【曾我廼家劇】より

…曾我廼家五郎(1877‐1948)と曾我廼家十郎(1869‐1925)によって始められた喜劇の名称。もと2人は歌舞伎の下級俳優だったが,歌舞伎に見切りをつけた五郎が大阪千日前の改良座で見た鶴屋団十郎の〈改良俄(にわか)〉(にわか)に触発され,廃業していた十郎を誘って笑わせる芝居を目ざして1903年に〈新喜劇〉の一座を結成した。…

【俄】より

…仁和歌,仁輪加,二輪嘉,二○加,加などとも書く。和,輪の心意を表すという。滑稽(こつけい),風刺,洒落,頓智(とんち)などをねらって即興頓作する即興狂言で,江戸時代から明治時代にかけて,江戸の吉原や大坂,京都,博多を中心に流行した。日本の滑稽風刺芸はたとえば古くは平安時代の《新猿楽記》に出てくる数々の猿楽芸(猿楽)に見られるが,俄はそうした古い芸能伝承の路線上に成立したものと考えられている。江戸時代の天和(1681‐84)のころ,京都島原遊廓の楼客の間で頓智を競う遊びが起こり(《好色一代男》),同じ島原の住吉祭には風流(ふりゆう)から発した即興の仮装が出て,町人たちが盛んに即興狂言を演じた。…

※「曾我廼家十郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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