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にわか

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


にわか

俄狂言の略。「仁輪加」「二〇加」などとも書く。にわかに仕組んだ寸劇の意。江戸時代から明治にかけて,大坂,京都を中心に流行した。京都では今宮,祇園などの祭礼に町人たちが異装をして,即興狂言を演じたのに始る。大坂では寛延 (1748~51) 頃から流行していた。江戸では「吉原俄」として明和~天明年間 (64~89) に吉原で行われていた。しろうとの「流し俄」が本来であるが,専門的に興行する者もあった。明治以後の喜劇の発生の一つの源となり,漫才にも大きな影響を及ぼした。

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デジタル大辞泉の解説

が【俄】[漢字項目]

人名用漢字] [音]ガ(呉)(漢) [訓]にわか
〈ガ〉だしぬけ。急に。「俄然
〈にわか〉「俄雨
[難読]俄羅斯(オロス)(ロシア)

にわか〔にはか〕【×俄】

[形動][文][ナリ]
物事が急に起こるさま。突然。「天候がに変化する」「には信じがたい噂」
病気が急変するさま。
「此の時御病いと―になりぬ」〈・中〉
一時的であるさま。かりそめであるさま。
「―にしもあらぬ匂ひ、いとなつかしう住みなしたり」〈徒然・一〇四〉
[名](「仁輪加」「仁和賀」などとも書く)「俄狂言」に同じ。

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百科事典マイペディアの解説

俄【にわか】

仁輪加とも記す。俄狂言の略。もと座興のために催した一種の茶番狂言。洒落(しゃれ),滑稽(こっけい)を主とし,終りを落(おち)で結んだ。江戸時代に吉原,島原などで流行したが,のち専門の俄師も生まれ,寄席(よせ)などで道具,鳴物入りで興行。
→関連項目喜劇

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世界大百科事典 第2版の解説

にわか【俄】

仁和歌,仁輪加,二輪嘉,二○加,加などとも書く。和,輪の心意を表すという。滑稽(こつけい),風刺,洒落,頓智(とんち)などをねらって即興頓作する即興狂言で,江戸時代から明治時代にかけて,江戸の吉原や大坂,京都,博多を中心に流行した。日本の滑稽風刺芸はたとえば古くは平安時代の《新猿楽記》に出てくる数々の猿楽芸(猿楽)に見られるが,俄はそうした古い芸能伝承の路線上に成立したものと考えられている。江戸時代の天和(1681‐84)のころ,京都島原遊廓の楼客の間で頓智を競う遊びが起こり(《好色一代男》),同じ島原の住吉祭には風流(ふりゆう)から発した即興の仮装が出て,町人たちが盛んに即興狂言を演じた。

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大辞林 第三版の解説

にわか【俄】

( 形動 ) [文] ナリ 
物事の急に起こるさま。だしぬけ。突然。すぐさま。 「一天-にかきくもる」 「 -には返答しかねる」
かりそめであるさま。臨時的。一時的。 「 -にしもあらぬ匂ひ、いとなつかしう/徒然 104
病気が急変するさま。「にわかになる」の形で危篤状態になる意を表す。 「死なむ命-になりぬ/万葉集 3811
( 名 )
即興的に演じる滑稽な寸劇。江戸時代、京都で、祭礼などに素人が演じたものが始まりで、江戸・大坂から地方に広まり、特に大坂で盛んに行われた。のちには専業の者も出、寄席・劇場に進出した。明治後期に衰退したが大阪・博多などでなお愛好されている。仁輪加。俄狂言。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


にわか

江戸時代に京都・大坂・江戸などの大都市を中心として行われた民間芸能の一つ。仁輪加、二〇加など多様な表記があり、形態もさまざまに変化して一定しないが、いずれも「にわか」すなわち即興的な物真似(ものまね)芸を特色とした。江戸では茶番ともいった。もっとも、茶番と俄の区別については江戸時代以来諸説があるが、実際において両者の間に明瞭(めいりょう)な一線は引けない。
 そもそも即興性の濃い物真似芸は日本芸能の古くからの伝統の一つであるが、江戸時代に俄の称でよばれたものは、軽口、頓作(とんさく)、見立て、もじり、洒落(しゃれ)などによる滑稽(こっけい)を主とした演芸で、祭礼、縁日のにぎわいのなかを流して歩いた流し俄、遊里の座敷で座興として行われた俄踊りや座敷俄などが代表的なものである。座敷俄の情景は、歌舞伎(かぶき)や人形浄瑠璃(じょうるり)の茶屋遊びの場面に取り入れられており、それらを通じてかつての俄の実態をうかがうことができる。また地方に伝播(でんぱ)したものとしては、博多(はかた)の正月や盆の行事として演じられた博多俄が知られている。
 当初の扮装(ふんそう)は、俄という名にふさわしく、頭に張りぼてのかつら(ぼてかつらという)をかぶったり手拭(てぬぐい)をのせたり、ときに仮面をつけたりする程度の簡略なものであったが、のちには本衣装を用いるはでなものも現れた。もともと通人の素人(しろうと)芸としてこれを行う者が多かったが、太鼓持ちなど廓(くるわ)の芸人で俄を得意とする者がおり、のちには専門の俄師が登場することとなった。18世紀に入ってとくに盛んになり、『古今俄選』(1774)のように評判をとった俄の趣向を集めた書物が出版されることもあった。さらに江戸後期には、俄とはいえ本格的な舞台を構えた俄狂言、俄芝居、寄席(よせ)で上演される寄席俄の出現をみるに至った。
 上方(かみがた)ではこの俄狂言、俄芝居が明治以降、改良俄、新聞俄など時事性の強い軽演劇に発展し、壮士劇(後の新派)を生み出すとともに、俄本来の喜劇性は新喜劇など上方喜劇に引き継がれた。江戸系の俄は吉原俄として20世紀初めまで伝承されていたが、いまは消滅している。今日、大阪や九州に俄師の流れをくむ芸人がわずかに俄の伝統を保持しているほか、まれに地方の祭礼に郷土芸能として俄の遺風を伝える所があるが、いずれも衰微が著しい。
 なお、農村の地芝居など素人芝居を、それが簡易な上演であるところから、俄とよぶ場合があった。[守屋 毅]

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