最近の国際人権状況(読み)さいきんのこくさいじんけんじょうきょう

知恵蔵 「最近の国際人権状況」の解説

最近の国際人権状況

世界は巨視的には大きく人権尊重の方向に向かいながら、実際には足踏みしている。国連人権委員会にかえて、人権理事会が2006年6月発足した。しかし米国は創設表決で反対し、理事国にも加わっていない。欧州審議会は同年6月7日、米CIAがポーランドルーマニアにテロ容疑者の秘密収容所を置いた疑いがあり、欧州各国がその移送に協力したとの報告書を公表した。基本権憲章を含むEU憲法はフランスとオランダ国民投票での批准拒否を受けて足踏み状態である。 06年5月には北朝鮮の人権問題を話し合う国際会議がノルウェーで開催された。日本では拉致問題など担当の人権担当大使新設に続き、同年6月北朝鮮侵害対処法を制定した。同月発表の米国務省の年次報告書によれば北朝鮮の強制労働収容所には推計15万〜20万人が投獄されているという。 世界の難民数は減少に向かっているが、難民高等弁務官事務所の発表によればなお1900万人を超える。 06年1月に発表された人種主義に関する国連特別報告者の日本報告書では、日本にはなお部落の人々、アイヌ沖縄の人々のようなナショナルマイノリティ、朝鮮等旧植民地出身者、外国人・移住者の3種類の被差別集団があると指摘された。テロ対策として改定された出入国管理難民認定法による外国人に対する指紋採取も今後の問題になりそうである。 人権、環境問題を含む企業の社会責任について国際標準化機構(ISO)は、07年に共通基準作成を目指している。

(宮崎繁樹 明治大学名誉教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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