移送(読み)いそう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「移送」の解説

移送
いそう

訴訟がある裁判所に係属している場合に,その裁判所の裁判によって訴訟属を他の裁判所に移転させることをいう。 (1) 民事訴訟法上,移送が行なわれるのには,いくつかの場合がある。第1は,管轄違いに基づく移送である。これは,最初に訴えを提起された裁判所に当該訴訟の管轄権がない場合に行なわれる。第2は,著しい損害または遅滞を避けるための移送である。第3は,簡易裁判所から地方裁判所に対する裁量移送,および簡易裁判所において反訴が提起された場合における地方裁判所への移送である。また上級審における移送があり,上級審の原審への差戻し一種の移送である。 (2) 刑事訴訟では,関連事件を分離する場合,審判便宜をはかる場合,高等裁判所の特別権限事件として起訴されたがそうでない場合,簡易裁判所が地方裁判所で審理するのが相当と認めた場合などに移送が認められる。 (3) 行政事件訴訟では取消訴訟と関連請求にある訴えを取消訴訟の係属する裁判所に移送することが認められている (行政事件訴訟法) 。

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デジタル大辞泉「移送」の解説

い‐そう【移送】

[名](スル)
ある所から他の所へ移し送ること。「身柄を移送する」
行政上の手続きや訴訟所管を、ある機関から他の機関に移すこと。

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日本大百科全書(ニッポニカ)「移送」の解説

移送
いそう

ある裁判所に係属している事件を裁判によって他の裁判所に移すことをいう。移送にはいろいろな場合があるが、おもな例をあげると、管轄のない裁判所に訴えが提起された場合の管轄裁判所への移送(民事訴訟法16条)、関連事件の審判の分離による移送(刑事訴訟法4条、7条)、審判の便宜のための移送(民訴法17条、刑訴法19条)、簡易裁判所の裁量移送(民訴法18条、刑訴法332条)、簡易裁判所の必要的移送(民訴法19条)、上級裁判所の裁判による下級裁判所への事件の差戻し・破棄差戻し・破棄移送(民訴法307条~309条、325条、刑訴法399条、400条、412条、413条)などがある。

[大出良知]

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精選版 日本国語大辞典「移送」の解説

い‐そう【移送】

〘名〙
① 人や物を現在の場所から他の場所へ移し送ること。
※令義解(718)戸「仍加医療。并勘問所由。具注貫属。患損之日。移送前所
② 行政上の手続きあるいは訴訟の所管をある機関から他の機関へ移すこと。
※続日本紀‐和銅五年(712)五月乙酉「若有廃闕者、乃具事状、移送式部、考日勘問」

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世界大百科事典 第2版「移送」の解説

いそう【移送】

裁判所が係属中の訴訟事件を,職権あるいは申立てにより,他の裁判所で審理させるために,そこに移すことをいう。その事件を取り扱うべきでない裁判所に事件が提起されたときにこの措置がとられることが多いが,それ以外の場合でも,他の裁判所で審理するほうがつごうがよいと認められるときには,その裁判所に移送することが認められている(民事訴訟法17条,18条,刑事訴訟法19条,332条等)。 民事訴訟では,たとえば神戸簡易裁判所に提起されるべき事件が神戸地方裁判所に提起されたり,福岡地方裁判所にしか管轄権がない訴訟が東京地方裁判所に提起された場合,被告が管轄が違う抗弁を出せば,決定という裁判の形式で事件を本来の管轄裁判所に移送することになっているが(民事訴訟法16条。

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世界大百科事典内の移送の言及

【判決】より

…これらのうち,どれがどの上訴において理由としうるかについては〈控訴〉〈上告〉の項を参照されたい。 破棄,自判,差戻し,移送破棄とは,民事訴訟の上告審または刑事訴訟の控訴審・上告審が,原審の判決を取り消すことをいう(民事訴訟の控訴審では,単に取消しという)。自判とは,下級審の判決を破棄しまたは取り消した上訴審が,みずから事件について審理・判決をすることをいい,差戻しは,同様に下級審の判決を破棄しまたは取り消した上訴審が,自判せずに,事件を下級審に再審理させるために送り返すことをいう。…

※「移送」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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