有ばこそ（読み）あらばこそ

精選版 日本国語大辞典

あら【有】 ば こそ

1. ① ( 条件句を構成して、これを受ける句に推量の助動詞を伴うのが普通 ) もしあれば。…であれば。全体で、「ないのだから（…ではないのだから）…しない」という反語的な気持を表わす。
   1. [初出の実例]「かすがひも とざしも安良波己曾(アラバコソ) その殿戸 我鎖(さ)さめ」(出典：催馬楽（７Ｃ後‐８Ｃ）東屋)
   2. 「人を思ふこころ木の葉にあらばこそ風のまにまに散りも乱れめ〈小野貞樹〉」(出典：古今和歌集（905‐914）恋五・七八三)
2. ② ( 中世以後に発生。無いの意を強調して ) あるどころではない。そんなものなどない。
   1. [初出の実例]「もとより勧進帳はあらばこそ、笈の中より往来の巻き物取り出だし」(出典：謡曲・安宅（1516頃）)
   2. 「避くる間もあらばこそ、風を切って吾輩の左の耳へ喰ひつく」(出典：吾輩は猫である（1905‐06）〈夏目漱石〉五)

あれ【有】 ば こそ

1. ＝あら（有）ばこそ②
   1. [初出の実例]「怪しんでゐる間も有ればこそ、それっと炭を継ぐ、吹く、起こす」(出典：浮雲（1887‐89）〈二葉亭四迷〉三)

出典　精選版 日本国語大辞典