有殻アメーバ(読み)ゆうかくあめーば(英語表記)testate amoebae

日本大百科全書(ニッポニカ) 「有殻アメーバ」の意味・わかりやすい解説

有殻アメーバ
ゆうかくあめーば
testate amoebae

原生動物の肉質虫亜門根足虫類有殻葉状仮足亜綱に属するものと、糸状仮足綱グロミア目に属するものの総称で、いわゆる殻testを有するアメーバをさす。前者は淡水産で、キチン質様の殻をつくるアルケラ科のもの、石英粒や珪藻(けいそう)を摂取して殻に利用するディフルギア科のもの、ケイ酸質の多数の小片からなる殻をつくるエウグリパ科のものがある。後者には淡水産のほかに海産のものも知られ、キチン質様の殻で、糸状仮足が吻合(ふんごう)anastomosisするグロミア科のものがある。

 殻の大きさは、大形種のDifflugia oblongaでは100~600マイクロメートル、小形種のグロミア科のChlamydophris stercoryaでは30~40マイクロメートル。殻の外形は多様で、円形で背側がドーム状、腹側がくぼみ、そこに開口部をもつアルケラ属、長円形の殻の周囲に4~6本の太い棘(とげ)をもつケントロピキシス属、壺(つぼ)を伏せた形のディフルギア属、多数の鱗(りん)状の小片で覆われる卵形のエウグリパ属、球形で一様な殻のグロミア属が特徴的。開口部の数は大部分の種が1個で、複数個もつ種(グロミア科のArtodiscus saltansなど)もある。開口部の形状も種により、円形、三日月形、Y字形、星形、歯車形などさまざまである。普通は二分裂で増え、親と等寸の娘(じょう)細胞が開口部の外側につくられるが、グロミア属のある種では多分裂もする。淡水種は、池の泥、よどんだ水中の植物、土壌中に普通にみられるが、ミズゴケは最適環境の一つである。広範囲の温度に耐え、熱帯から極地まで分布域が広い。餌(えさ)は、小形種では細菌、藻、カビ、大形種では原生動物やワムシ。乾燥などの環境悪化に対して、普通、殻内に閉じこもり、開口部に膜やケイ酸質の栓を形成する。

[堀上英紀]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の有殻アメーバの言及

【アメーバ】より

…このアメーバは細菌のほかに赤血球を捕食する。なお,広義には有殻アメーバ目Arcellinidaに属する原生動物や動植物の細胞でアメーバ状の時期のものも含む。有殻アメーバはキチン質やケイ質の殻をつくり,基部に開いている穴から仮足をだして運動したり餌をとる。…

※「有殻アメーバ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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