改訂新版 世界大百科事典 「ワムシ」の意味・わかりやすい解説
ワムシ (輪虫)
rotifer
wheel animalcule
輪形動物門Rotiferaに属する無脊椎動物の総称。大部分は淡水中にすむが,一部のものは湿った土,乾いたコケの間,海中などにすみ,海岸の砂泥1l中に100万以上の個体がいるといわれる。世界に1500~2000種,日本で170種ほどが知られている。体長は0.05~2mmで頭,胴,足の三つの部分からなっている。体表は厚いクチクラの甲か,軟らかい外皮で覆われている。体の前端には輪毛器があって,ここの繊毛が車の輪が回っているように見えるところから輪虫の名がある。前部の前端よりやや腹方に口があり,咽頭部につづく。咽頭部はそしゃく囊ともいわれ,複雑なそしゃく器があり,種類によって形状が異なっている。胃,腸とつづき直腸になるが,ここには原腎管や輸卵管なども開き,肛門は背面の後端に開いている。体の後端の足部にはいろいろな形があり,足の先端に趾をもつものがある。足部には1対の足腺があって,ここから粘液を分泌して他物に付着する。
雌雄異体で,雄の体は雌の大きさの1/5ほどしかなく,消化器官や排出器官が退化し,生殖器官と脳が見られるにすぎない。なかには,雄が知られていない種類もある。生殖法はふつう単為生殖で,産みだした卵は受精しないで雌に発達する。長い期間にわたって,このような状態がつづいたり,環境が悪くなると,単数の染色体をもった卵が生じ,交尾により受精して厚い殻をもった耐久卵になって何ヵ月間も休眠状態を過ごすことができる。このような単為生殖と両性生殖を交互に繰り返す生殖法をヘテロゴニーheterogonyという。耐久卵が孵化(ふか)すると雌になって再び単為生殖を繰り返す。受精しなかった卵は雄になる。食物には植物性プランクトン,ミジンコ,繊毛虫類などがあり,種類によって食べるものがだいたいきまっている。
池や沼ではツボワムシBrachionus calyciflorus,ツキガタワムシLecane luna,ミズワムシEpiphanes senta,カメノコウワムシKeratella cochlearisなどがふつうに見られる。ワムシは稚魚や稚エビなどの餌として好適で,そのため各養殖場ではシオミズツボワムシB.plicatilisを培養してこれらに与えている。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報