ワムシ(読み)わむし(英語表記)rotifer

翻訳|rotifer

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワムシ」の意味・わかりやすい解説

ワムシ
わむし / 輪虫
rotifer
wheel animalcule

袋形(たいけい)動物門輪毛虫綱Rotatoriaに属する水生微小動物の総称。かつては輪虫類ともよばれた。この類は側輪毛虫類と真正輪毛虫類の2亜綱からなる。前者コノハエビなどのえらに着生するウミヒルガタワムシが代表で1属1科1目を形成する。後者は生殖巣の数の差などにより双生殖巣類と単生殖巣類の2上目に分類され、前者はヒルガタワムシ1目からなり、後者はツボワムシ類、ミズワムシ類、セナカワムシ類、フクロワムシ類、ハナビワムシ類の5目からなる。

 外形はさまざまであるが、基本的には頭、胴、脚(あし)の3部からなり、頭部には輪毛器を備え体表はキチン質で覆われている。トロコフォラTrochophora(担輪子幼生)に似ているものが多い。体長は30マイクロメートルから2ミリメートルまで。雌雄異型で雄は小さく体制も未分化。1個体を構成している細胞数は雌でも1000個以下。孵化(ふか)後、細胞分裂は行われず、単に細胞の移動と分化により諸器官が形成される(細胞数一定性)。雌の消化器官系は口、胃、腸とそれに開口する唾腺(だせん)、胃腺からなり、排出器官系は原腎(じん)管、火炎球茎、膀胱(ぼうこう)と総排出口、生殖器官系は卵巣、卵黄腺、子宮。また、眼点、突出部、触毛などの感覚器は著しく発達している。耐性がきわめて強く、あらゆる水域に生息して大洋や大湖のプランクトンとなっているものもあるが、水草の生育している水域、土壌、コケ、砂などの間隙(かんげき)水中にもっとも多い。一般には自由生活を営むが、ある時期に限って付着生活を営む属種もある。出現期は種や性によって異なるが、雌はおおむね四季を通じてみられる(多輪廻(りんね)性)が、高温時(夏季狭温性)や低温時(冬季狭温性)に出現するもの(単輪廻性)も、春と秋2回出現するもの(二輪廻性)もある。

 垂直分布は季節により異なるが、昼夜移動を行う属種もある。雌にはいくつかの型があって、有性生殖を営むものと営まないものがあり、普通目に触れるものは後者で、前者の未受精卵からは雄が孵化する。食物連鎖の点で、この類は小形の藻類を食べ、魚貝類の餌(えさ)となっている。近年、魚貝類の増殖において初期幼生の餌料(じりょう)として、また水質汚濁の指標として重要さが再認識されている。

[鈴木 實]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例