改訂新版 世界大百科事典 「朱印寺社」の意味・わかりやすい解説
朱印寺社 (しゅいんじしゃ)
江戸時代,将軍が出した朱印状によって,寺領の年貢が免除された寺院や神社のこと。朱印状の文言はほとんど変わらないが,与えられた寺領高,社領高はそれぞれ異なっている。朱印状が寺社に下付されるのは歴代将軍の就任の時期であるので,寺社には15人の将軍より朱印状が下付されたわけである。朱印地の高の大小はそれほど問題ではなく,1石といえども将軍から下付された朱印地を所有していることが,寺格,社格の高さにつながっている。つまり朱印状所持の有無が,近世の初期において由緒正しかったことの証拠として,後年利用されることになった。全国の朱印寺社を書き上げたものとして,1665年(寛文5)の《寛文朱印留》(国立史料館所蔵)が残っているが,これには朱印状が1511通所収されている。その内訳は,門跡寺院29通,諸社領367通,浄土宗154通,日蓮宗86通,真言宗225通,天台宗121通,法相・時宗・律宗・一向宗97通,曹洞宗261通,臨済宗132通,比丘尼寺院27通,院家寺院12通となっている。
執筆者:圭室 文雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報