国指定史跡ガイド 「東海道宇津ノ谷峠越」の解説
とうかいどううつのやとうげごえ【東海道宇津ノ谷峠越】
静岡県静岡市駿河区宇津ノ谷、藤枝市岡部町にまたがる峠。南アルプスから駿河湾に延びる尾根に含まれ、標高約300mの通称宇津ノ谷山の鞍部にあり、江戸時代の五街道の一つ、東海道が越える峠である。この山並みを越える道の歴史は古く、奈良時代には主要な道筋になっていたと推定されており、平安時代には「蔦の細道」と呼ばれる道が知られたが、その後は廃道になった。1560年(永禄3)の今川義元の西上や1590年(天正18)の豊臣秀吉の小田原攻めでは、現在残されている東海道の峠道が使われ、江戸時代の宿駅制度のもとでは丸子宿と岡部宿の間に位置し、参勤交代もあって道の整備が進んだ。明治になると煉瓦造りのトンネルが掘られ、1959年(昭和34)に国道1号のトンネルが開通し、1998年(平成10)にも新しいトンネルができ、国道1号は上下2車線ずつの通行が可能になった。発掘調査の結果、峠には石垣のある建物跡が検出され、地蔵堂と考えられる。2010年(平成22)、峠を越える全長約1.25kmのうち、宇津ノ谷の集落など往時の道をしのばせる約1kmと地蔵堂跡などが、国の史跡に指定された。JR東海道新幹線ほか静岡駅からしずてつジャストラインバス「坂下」下車、徒歩約5分。