日本大百科全書(ニッポニカ) 「松前昆布」の意味・わかりやすい解説
松前昆布
まつまえこんぶ
北海道または渡島(おしま)半島南東部産の昆布。日本における昆布の主産地は北海道で、その90%以上を産出しているが、北海道産の昆布は早くから上方(かみがた)に移出され、室町時代には「宇賀(うが)の昆布」として京都に送られる全国の特産品の一つにあげられていた。宇賀は函館(はこだて)市近郊の地で、マコンブの主産地である。江戸時代には志海苔(しのり)昆布ともよばれた。松前昆布なる呼称がいつごろから生じたものか定かでないが、江戸中期ごろまでの北海道内の主産地は箱館(はこだて)近郊、噴火(内浦)湾沿岸部であったから、当初はこうした地域の昆布をさしたものとみられる。しかし、その後、場所請負制度が成立、発展し、請負人によって蝦夷(えぞ)地の各漁場が開発され、利尻(りしり)、日高(ひだか)、釧路(くしろ)、根室(ねむろ)地方産の昆布の移出が多くなるにつれ、特定地域産の昆布をさすというよりは、北海道産昆布の総称という性格が強くなっていった。
[榎森 進]
『北海道水産協会編・刊『北海道漁業志稿』(1935)』▽『羽原又吉著『支那輸出日本昆布業資本主義史』(1940・有斐閣)』