精選版 日本国語大辞典 「噴火」の意味・読み・例文・類語
ふん‐か ‥クヮ【噴火】
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地下にあったマグマ、岩石などの液体や固体が、爆発によって火口から地上(空中)へもたらされる現象。火山ガスのみが放出される場合は一般に噴火とはいわない。おもにマグマそのものが噴出される噴火をマグマ噴火とよぶ。水蒸気爆発では古い溶岩や火山砕屑物(さいせつぶつ)のみが放出される。両者の中間型の噴火のことをマグマ水蒸気爆発とよぶことがあるが、もともとのマグマ水蒸気爆発は海底や湖底で起きたマグマ噴火のことである。
[中田節也 2015年1月20日]
噴火の規模は、噴出物量や火口から噴き上がる火山灰とガスの噴煙の柱(噴煙柱)高度がその判断の尺度となる。火山爆発指数とよばれ0から8までの9段階に区分する方法が提案されている。爆発指数8や7が超巨大噴火、6と5が巨大噴火(非常に大規模な噴火)、4が大規模噴火、3がやや大規模噴火、2が中規模噴火、1が小規模噴火、0が非爆発的な噴火とされる。爆発指数が1違うと噴出物量は10倍異なる。超巨大噴火、非常に大規模な噴火では10億立方メートル以上の噴出物が短期間に放出され、火山灰の噴煙柱が25キロメートル以上立ち上る。大量のマグマが短期間で放出される超巨大噴火では陥没カルデラができるのが普通である。噴出物量と噴煙柱の高さは、大規模噴火ではそれぞれ1億立方メートル以上で10キロメートル以上。中規模噴火ではそれぞれ100万立方メートル以上で1~5キロメートル。小規模噴火ではそれぞれ数百立方メートルで1キロメートル以下であるとされる。1815年にインドネシアのスンバワ島タンボラ火山でおきた噴火は火山爆発指数が7、1991年フィリピンのルソン島ピナツボ火山でおきた噴火は火山爆発指数が6とされる。日本の比較的新しい噴火では富士山の1707年(宝永4)噴火が火山爆発指数5である。
噴火の頻度は小さな噴火が頻繁におこるのに対し、規模の大きい噴火は少ない傾向にある。たとえば、爆発指数7より大きい噴火はタンボラ火山の1815年噴火以来発生していない(2014年現在)。
[中田節也 2015年1月20日]
マグマ噴火の場合は、マグマに含まれている揮発性成分(おもに水分)が地表近くでガスとなってマグマから分離し(泡だって)体積膨張することによって爆発がおこる。泡だったマグマは細かく粉砕し、火山灰、軽石、火山ガスとなって地上(空中)にもたらされる。噴火が爆発的な場合は、火山灰と火山ガスの混合物が周囲の空気を取り込んで膨張・対流しながら高く上昇しキノコ雲状の噴煙の柱(噴煙柱)をつくる。爆発の規模は地上近くまでマグマが上昇してくる間に、マグマから揮発性成分がどれだけ抜けたかによって決まっている。また、ケイ酸分に富むマグマほど揮発性成分が逃げにくく、一般に爆発的になる。マグマ水蒸気爆発の場合は、地下水や海水などがマグマと接触し、マグマの熱で水が加熱され水蒸気化し圧力が急激に高まって爆発がおこる。この際、マグマが細粉化して水の気化が一気におこり、細かい火山灰となって噴出すると考えられている。水蒸気爆発の際は、マグマが直接噴出せず、気化した水蒸気が古い岩石を破砕して、細かい火山灰となって放出される。
マグマ噴火の種類には、プリニー式、ストロンボリ式、ブルカノ式、ハワイ式などがある。
「プリニー式噴火」では軽石や火山灰からなる噴煙の柱がキノコ雲状に形成され、上空高く放出された軽石や火山灰が広範囲に堆積(たいせき)する。この噴火によって火砕流が火口から四方八方に流れ下ることもしばしばある。規模の大きい噴火にみられる。プリニアン噴火ともいう。紀元79年のイタリアのベスビオ火山でおきた噴火現象に遭遇・記録した大小プリニウスの名前に由来する。
「ストロンボリ式噴火」は、火口から粘り気の低い玄武岩質マグマのしぶきや破片が比較的短い間隔で周期的に四方に放出される噴火現象である。長時間露出の写真では赤いシャワーのように見える。火口やその直下にあるマグマ中で大きな泡が破裂することによっておこる。イタリアのストロンボリ火山で特徴的に観察される現象なのでそれに由来する。日本でも阿蘇山(あそさん)や諏訪瀬島(すわのせじま)の噴火でしばしば観測される。
「ブルカノ式噴火」は、安山岩質の火山によくみられる爆発現象で、突然、火山弾や噴石を噴き飛ばし、火山灰の噴煙が上昇する。溶岩が火口でいったん固まって、その地下のマグマの圧力が高まったためにおこる爆発である。イタリアのリパリ諸島ブルカノ火山に由来する。浅間山や桜島など日本の火山で多い爆発現象である。
「ハワイ式噴火」は、粘性の低い流動的なマグマが割れ目火口や複数の火口から溶岩噴泉によって噴出し、溶岩が比較的高速で地上を流れる現象である。ハワイのキラウエアやマウナ・ロアが模式地で、伊豆大島や三宅島(みやけじま)でみられることもある。
[中田節也 2015年1月20日]
噴火は、発生場所によって山頂噴火と側噴火とに、あるいは、中心噴火と割れ目噴火とに分ける場合もある。さらに、陸上噴火、海底噴火、湖底噴火、氷河下噴火と分けることもある。
噴出物の形態としては、液体状態のままの「溶岩流」が火口から流れてきてたまる場合、および、いったん、粉々になったマグマや古い岩石が「火山砕屑物」として、上空に噴き上げられて降り積もる場合(降下火砕物)と、斜面を火山ガスといっしょに流れてきてたまる場合(火砕流堆積物)とがある。また、二次的な堆積物としては、山体崩壊によっておこる岩屑なだれ堆積物(がんせつなだれさいせつぶつ)や、降雨や雪解け水が媒体となって移動し堆積する泥流(土石流)堆積物がある。
[中田節也 2015年1月20日]
火山災害は噴火の規模とは直接関係がなく、火砕流、泥流、海底噴火や山体崩壊によって引き起こされた津波など、火山灰や水が急速に地表を流れる現象によって大きくなる傾向がある。西インド諸島のフランス領マルティニーク島プレー火山で1902年におきた火砕流(熱雲、火山爆発指数4)では約2万8000人が犠牲になった。コロンビアのルイス火山(ネバド・デル・ルイス火山)で1985年におこった噴火(火山爆発指数3)では泥流で約2万3000人も犠牲になった。また日本では、長崎県島原(しまばら)半島にある眉山(まゆやま/びざん)が1792年(寛政4)の普賢岳噴火(ふげんだけふんか)(火山爆発指数2)の直後に大崩壊し、岩屑なだれが有明海に流入して引き起こした津波では約1万5000人が犠牲になった。火山災害による被害規模は、人口密集地が火山にどれだけ隣接しているかも大きな要因である。
[中田節也 2015年1月20日]
『久保寺章著『火山噴火のしくみと予知』(1991・古今書院)』▽『NHK取材班他著『火山列島日本』(1991・日本放送出版協会)』▽『石川秀雄著『桜島――噴火と災害の歴史』(1992・共立出版)』▽『ロバート・W・デッカー、バーバラ・B・デッカー著、井田喜明訳『火の山――噴火の驚異とメカニズム』(1995・西村書店)』▽『宇井忠英編『火山噴火と災害』(1997・東京大学出版会)』▽『吉田正夫編『自然力を知る――ピナツボ火山災害地域の環境再生』(2002・古今書院)』▽『渡辺尚志著『浅間山大噴火』(2003・吉川弘文館)』▽『産業技術総合研究所地質調査総合センター編『火山――噴火に挑む』(2004・丸善)』▽『伊藤和明著『地震と噴火の日本史』(岩波新書)』
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(井田喜明 東京大学名誉教授 / 2007年)
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…すなわち,火山体下部の温度が上昇し,山体はふくらみ,マグマの上昇に伴って,まわりに無理が加わるため,地震が起こり,マグマから遊離したガスが多量に放出されるなどである。これらの現象を観測することによって火山活動を数量的に記述することができるため,火山現象の理解を深め,かつ噴火の前兆現象をとらえることができる。このためには個々の火山で息の長い各種の観測を続ける必要がある。…
…火山噴火はしばしば火山周辺の環境を破壊し災害をおこす。噴火の様式・規模はきわめて変化に富み,火山周縁の環境も多様なので,発生する災害の種類や規模もさまざまである。…
※「噴火」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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