改訂新版 世界大百科事典 「柏屋」の意味・わかりやすい解説
柏屋 (かしわや)
江戸時代の商店名。著名な店としては,京都に本店をおき,江戸に出店を設けた木綿問屋柏屋がある。創業者は柏原三右衛門(1601-89)。寛永年間(1624-44),京都に呉服・小間物類の仕入商売の店を開き,天和・貞享(1681-88)ごろ,江戸本町に進出した。2代目以後は孫左衛門を名のる。江戸店では初めは京都産の扇子,小間物,きせるなどを主として扱うが,18世紀に入ると木綿が中心となり,木綿問屋として大をなした。江戸の木綿問屋は,伊勢に本店をおき木綿専業の問屋が多い大伝馬町組と,京都に本店をおき呉服兼業の問屋が多い白子組の2群に分かれるが,柏屋は白子組に所属し,京都に本店がありながら木綿を主として扱う問屋として異色の存在であった。安永年間(1772-81)には黒江屋太兵衛名義の塗物店を,1781年(天明1)には松坂屋半右衛門名義の紙店を江戸に開き,明治期以降は洋紙店に移行した。
執筆者:林 玲子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報