柱や壁などに張って、見るのに便利にした一枚刷りの略暦をいう。江戸時代、柱暦は各地の暦師のうち、幕府から公認された京都の大経師、江戸暦問屋、南都暦師のうち2人だけに出版が許された。しかし庶民にとっては値段も安く便利であったため、公認暦師以外にも出版する者が多く、また商家では年末年始の挨拶(あいさつ)がわりに柱暦を配った。そしてしだいに意匠を凝らした華美な柱暦がつくられるようになり、しばしば本暦から逸脱した暦類似品禁止の町触れが出されるようになった。この風習は明治になって太陽暦が施行されて以後も盛んで、多種多様な柱暦が多色刷りでつくられ、また広告を刷り込んだものも生まれた。江戸時代には、柱暦の文字のかわりに絵文字を用いた南部盲(めくら)暦や、柱暦を折り畳んだ懐中(かいちゅう)暦のような特殊な暦も現れた。
[渡辺敏夫]
…もちろん暦法は天文方と同じものを用いたが,迷信的暦注がとくに多いということくらいが特色であった。 以上のほか現存するものがない幻の暦といわれる大宮暦,ふすまの下張りから近代になってようやく発見された泉州暦,その他秋田暦,仙台暦など,表紙になまずの絵のかいてある〈いせこよみ〉,南部や田山の盲暦や月の大小のみを表す大小暦などの絵暦,旅に用いる懐中暦,柱暦などがある。また七曜暦といって太陽,月,惑星の位置のみを記した簡単な天体暦もあった。…
※「柱暦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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