人情本。為永春水(ためながしゅんすい)作、歌川国直(くになお)画。五編15巻15冊。1836、37年(天保7、8)刊。「風月/花情」と角書(つのがき)。日本橋徳町(石町)の富商福富屋の次男で向島(むこうじま)の別荘に若隠居している鳥雅(ちょうが)と深川の芸者小浜、吉原玉楼の花魁(おいらん)薄雲、腰元のお民(たみ)との恋愛関係を描いた作品で、続編『春色籬(まがき)の梅』(1838)に至っていちおう完結する。二編巻之五までは春水単独作で、以下は門人の春蝶(しゅんちょう)、柳水(りゅうすい)、春暁、春江らの執筆している場面が多い。そのために構想も散漫で、文章も拙劣であるが、春水執筆の巻之五までは、筆力もさえ、春水独特の凄艶(せいえん)な場面描写の妙が遺憾なく発揮されている。多くの実在人物を登場させて「時代(ときよ)の風俗」を描こうとし、そのために女性の衣装描写もきわめて精細で、典型的な風俗小説である。
[神保五彌]
『前田愛校注・訳『春告鳥』(『日本古典文学全集47』所収・1971・小学館)』▽『神保五彌「風月花情/春告鳥」(『国文学解釈と鑑賞』所収・1965.5・至文堂)』
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
…これらそれぞれのグループ内の近縁種は,互いに姿,羽色が非常によく似ているが,さえずりは種ごとにはっきりと違っている。【樋口 広芳】
[民俗]
春に早く現れて微妙な声で鳴くので,春告鳥,花見鳥,歌詠鳥,経読鳥などの異称がある。この鳥を重要な要素とする昔話に,鳴声で父が子の死を知る〈継子と鳥〉,禁止を守らず幸福を失う〈見るなの座敷〉,愚か嫁がウグイスの声をまねて失敗する〈鶯言葉〉などがある。…
…この作品は若い婦女子の読者から熱狂的歓迎を受け,春水は一躍文壇の第一線に登場し,自ら〈江戸人情本の元祖〉を名のった。読者の好評もあって,書肆の依頼で次々にこの作品の続編を執筆することになり,ほかにも《春告鳥(はるつげどり)》(全4編,1836‐37)以下の多数の作品を発表する。当然全作品を独力で完成することは難しく,36年以後の作品の大部分は,〈為永連〉と称する春水と新しい門人たちの制作であった。…
…しかし,2世楚満人の戯号を改めた為永春水が,1832年(天保3)《春色梅児誉美(しゆんしよくうめごよみ)》を発表するに及んで,その凄艶な恋愛描写と洗練された〈いき〉の美学が少なからぬ反響を呼び,風俗小説としての人情本のジャンルが確立することになった。みずから〈東都人情本の元祖〉と名のった春水は,《春色梅児誉美》にひきつづいて,深川芸者の意気地と張りを描いた《春色辰巳園(たつみのその)》(1833‐35),富裕な商家の若旦那と小間使の恋をつづった《春告鳥(はるつげどり)》(1836)などの佳作を発表するが,殺到する注文に応ずるために門弟を動員した合作体制をとった37年以降の作品には見るべきものが乏しい。人情本作者としては春水のほかに,《閑情末摘花(かんじようすえつむはな)》(1839‐41)の松亭金水,《仮名文章娘節用(かなまじりむすめせつよう)》(1831‐34)の曲山人らがあげられるが,天保の改革の際に風俗を乱すものとして春水が処罰されてからは,ジャンルとしての生命を失っていく。…
※「春告鳥」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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