改訂新版 世界大百科事典 「格体全録」の意味・わかりやすい解説
格体全録 (かくたいぜんろく)
Gé tǐ quán lù
清朝の康煕帝の晩年,1720年(康煕59)ころフランス人イエズス会士パランナンD.Parennin(漢名,巴多明)が勅命を受けて満州語に訳出したヨーロッパ解剖学の書。フランス人外科学者P.ディオニスの書物に基づき,さらにデンマークの解剖学者トーマス・バルトリンの解剖書の図をとり入れた。康煕帝ははじめ中国医学の発達に役立つとして翻訳を命じたが,後に解剖書のようなものは風教をそこなうと考え,満州語訳にとどめ,漢訳を断念した。その満州語訳も3本の複写にとどめたため,一般に流布することはなかった。パランナン自身は別に1本を作り,これをフランスに送ったものがパリに現存する。宮廷にあった写本も散逸したとみえ,現在デンマークに1本,大阪の杏雨書屋に1本がある。杏雨書屋の目録(1982)には標記の書名で著録されているが,黒田源次の論文には《欽定各体全録》となっている。
執筆者:藪内 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報