案ずるより産むが易い(読み)あんずるよりうむがやすい

ことわざを知る辞典 「案ずるより産むが易い」の解説

案ずるより産むが易い

むやみに心配して悩むよりも、思い切って行動するほうが案外うまくいくことのたとえ。

[使用例] 隠し立てしたかてしょうがない、いっそ綿貫の計略の裏掻いて、自分に都合のええことも悪いことも、何でもかでも残らずッちゃけて、あとは成り行きに任してやろ、ひょッとしたら案じるより生むが易うて、どんなうまいことあるかもしれへんと、すっくり腹きめてましたのんで[谷崎潤一郎*卍|1931]

[使用例] その友人が〈略〉「なに、案ずるより、うむがやすしさ。言葉なんて、意外に通ずるものだよ。タクシーにのって、ツリ銭をもらいたい時も、バック、マニーと言ったら、ちゃんとツリを戻してくれたからね」そう自慢していたのをこの時、思いだしたのであった。我々三人も何とかなるだろう[遠藤周作*ボクは好奇心のかたまり|1976]

[解説] かつては「産は女のたいやく」「産は女の命定め」などといい、出産は大きなリスクを伴うものでした。ことわざは、不安にかられ、心身ともに不安定になりがちな妊婦を支え、励ます表現であったと思われます。
 しかし、近代の用例の大半は、出産と直接かかわりのない比喩的な用法で、むやみに取り越し苦労をしないで、ともかくやってみることを勧めるものです。世間を渡っていこうとすると、さまざまなリスクがあり、不確実な要素も必ずあります。しかし、思い悩んで心配するときりがなく、気分も落ち込み、積極的に行動できなくなりかねません。こういう楽観的なことわざは、気分を切り換え、行動に踏み出すうえで大いに役立つといえるでしょう。

英語〕Don't cross the bridge till you come to it.(橋に着く前に橋を渡るな)

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