行動(読み)コウドウ(英語表記)behavior

翻訳|behavior

デジタル大辞泉 「行動」の意味・読み・例文・類語

こう‐どう〔カウ‐〕【行動】

[名](スル)
あることを目的として、実際に何かをすること。行い。「具体的な行動を起こす」「行動を共にする」「自分で考えて行動する」「行動力」
心理学で、外部から観察可能な人間や動物の反応をいう。
行為[用法]
[類語](1おこな振る舞い行為きょ活動動き所行しょぎょう言動言行げんこう行状ぎょうじょう行跡ぎょうせき沙汰運動実行運行生動蠢動しゅんどう躍動活躍奔走動く動き回る働く実践躬行きゅうこう励行履行実施施行しこう執行決行敢行断行遂行行う挙行強行再挙執り行う手を下す

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精選版 日本国語大辞典 「行動」の意味・読み・例文・類語

こう‐どう カウ‥【行動】

〘名〙
① 人、動物が目的をもって、意志的に体を動かしたり、他にはたらきかけたりすること。ふるまい。行為。〔訳鍵(1810)〕
※親子(1903‐04)〈国木田独歩〉上「二人の行動(カウダウ)の善悪は最早(もう)言はぬ」
② 心理学で、客観的に測定できる刺激に対応する生体の筋肉反応や内分泌腺反応の仕方や状態を総称していう。

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改訂新版 世界大百科事典 「行動」の意味・わかりやすい解説

行動 (こうどう)
behavior

一般的な言葉であるが,ここでは動物行動学上の用語として説明する。動物の個体が表す動きactionや反応reactionのうち,生活上の意味(機能)をもつものをいう。必ずしも体の移動locomotionや運動movementを伴う必要はなく,じっと動かないで隠れているような場合や,体の一部だけの動きでも,それが生活上の意味をもてば行動と呼ぶことができる。

動物はきわめて多様な行動のレパートリーをもっているが,特定の状況で必要な行動がまちがいなくとられなければ生きていくことはできない。それを可能にするのは次のようなメカニズムであると考えられている。まず動物の内部で特定の行動に対する衝動driveまたは動機づけmotivationが高まる。そういう状態において適切な信号を伝えるリリーサー(解発因)に出会うと,生得的解発機構を介してその行動が解発されるというわけである。したがって,内的状態と外的条件が二つながらそろって,初めて適切な行動が解発されることになる。一般に内的な動機づけが高まってくると(あるいは高まっているにもかかわらずリリーサーが見当たらないと),動物は積極的にリリーサーを探し求める。例えば性衝動の高まった雄が雌を探し求めてあちこち動き回るといったもので,こういう行動は欲求行動appetitive behaviorと呼ばれる。うまく目標が達成された場合には欲求は消滅するが,いつまでもリリーサーに出会えないと,しだいに解発の閾値(いきち)が低下し,誤った刺激で解発されたり,ついにはまったく対象なしに行動が出現することになる(真空行動)。

 一方,一つのリリーサーが動物の相反する動機づけ(例えば攻撃と逃走)を刺激する場合には葛藤(かつとう)行動conflict behaviorが現れる。トゲウオのジグザグ・ダンスはその好例で,攻撃と逃走が交互に解発されることによって生じるものである。相対立する衝動の拮抗の結果,別の対象に行動を向ける転嫁行動redirected behavior(例えば上位の個体に攻撃された個体が下位の個体に攻撃を向ける場合)やまったく別種の行動が現れる転位行動displacement behavior(例えば闘争の最中に突然餌を食べはじめるような場合)も葛藤行動に含まれる。

リリーサーと生得的解発機構はそれぞれの動物の種によって遺伝的にきまっており,それによって現れる行動を生得的行動innate behaviorと呼ぶ(従来これは本能行動instinctive behaviorと呼ばれたものであるが,本能という概念のあいまいさゆえに今日では用いられなくなった)。これに対して経験や学習によって形づくられる行動も確かにあり,それらを学習行動または習得行動learned behaviorと呼ぶ。古くから行動が生得性によるのか学習によるのかという議論があるが,この問題に対する答えは単純ではない。一般にある生物学的な意味をもつ行動パターンは単一の行動から成りたつものではなく,いくつかの行動成分の連鎖からなる(反射走性定位といったものも,その成分の一つである)。例えば,ネコがネズミを捕らえる行動を考えてみると,少なくとも身構える,跳びつく,殺す,食べるという四つの行動成分があり,それぞれに特異的な動機づけが存在する。つまり,ネコの内的状態に応じて,殺すが食べない,跳びつくが殺さない,身構えるが跳びつかないということがありうるのである。したがって,もちろん単一の狩猟本能などというものがないことは明らかであるが,しかし何を獲物とすべきかという点について見れば,親から学習しなければならない。また鳥の〈刷込み〉という現象では,刷り込まれる対象についていえば学習的といえるが,それが起こりうるのは遺伝的に決まった特定の時期だけであり,刷り込まれた対象に向ける行動パターンも遺伝的に決まっている。したがって,ある行動パターンが全体として学習的であるとか生得的であるとかいう議論は無意味であり,むしろその行動パターンがどういう成分からなり,それぞれの成分にどういう動機づけがあり,そのどの部分で学習が作用するかを明らかにするほうが重要である。

動物の行動はその機能によってさまざまに分類される。以下に代表的なものについて論じる。

性行動,繁殖行動ともいう。雌雄が出会ってから交尾に至るまで,生殖にかかわるすべての行動が含まれる。配偶行動の発現はおもにホルモンによって制御される。だいたいその動物の繁殖シーズンに合わせて行動が活発になる。多くの動物の出産が春から初夏にかけて行われるが,このような場合,冬の終りごろから生殖腺が大きくなり,雌雄の性ホルモンの活性が高まって,これが個体の内的な衝動を高め相手を求める欲求行動を導く。例えば,日長が長くなり温度が高くなってくるとカナリアの雄の性的衝動が高まり,さかんにさえずるようになる。これは雄性ホルモン(アンドロゲン)の影響である。さえずりは雌のエストロゲンの生産を促し,巣造りを始め,体内では卵が発達しやがて交尾に至る。ほとんどの動物は,年周期的に配偶行動が発現するが,年1回の場合と2回以上の場合がある。

 雌雄の出会いから交尾に至るまでの過程をスムースに行わしめるのが求愛行動courtship behaviorである。まず体色の変化(婚姻色),種に固有の発声,発光パターン,フェロモン,あるいは独特の行動によって,雌雄が引き寄せられる。いったん雌雄が出会うと,次には両者が相手を見て攻撃したり逃走するのを抑える行動が現れる。これは一般に攻撃的な部分を隠したり,相手をなだめるための儀式化した身ぶり,すなわちディスプレーによって果たされる。なだめの行動として広くみられるものに求愛給餌 courtship feedingがある。これは雄が雌に食物(儀式化して単なる形式になっている場合も多い)を与えるもので,アジサシなどの鳥類,オドリバエなどの昆虫にその典型的な例がみられる。

子を産んでから,子が独立して生活できるようになるまでに親が示す行動のすべてをいい,鳥類の抱卵,抱雛(ほうすう)なども含まれる。当然のことながら,未熟な状態で子を産み落とす種ほど,育児行動はよく発達している。トゲウオの雄は巣の近くで卵を守り,稚魚の防衛をし,ティラピアなどのマウスブリーダーと呼ばれる魚は,母魚が口内で卵を孵化(ふか)し,稚魚は危険を感ずると母魚の口内に隠れる。留巣性(晩成性)の鳥の雛は巣の中で親鳥の給餌を待つが,親が餌を運んでくると,口を大きく開き,鳴声をあげて給餌しやすい信号を送る。イスカの雛の口の内側には青藍色に光る突起が4ヵ所にあり,これが親の給餌行動のリリーサーとなる。ライオンやキツネは単に哺乳して子を育てるだけでなく,一定期間ともに生活して獲物を狩ることなどを教える。また,胎児が早く産まれる有袋類は育児囊を有し,この中に胎児を入れて育てる。

動物が自分たちを害すると思われる相手に対して示すすべての行動を含む。カメが甲の中に体を引っこめるのも,ハリネズミが針を逆立てるのもそうした行為の一つである。隠蔽の効果の高い体色や形をした鳥の雛(例えばキジ,チドリ)が,枯草や小石の間にうずくまって不動の姿勢をとるのも防衛行動の一種である。多くの昆虫,魚などは,体色や形の効果を利用し隠れる防衛を行っているが,逆に目だつ色彩やパターンを利用して相手を威嚇して身を守る場合もある。フクロウチョウの後翅(こうし)にはフクロウの目のような斑紋(目玉模様)があるが,普通に静止しているときには前翅の下になって見えない。しかし,危険を感じてはばたくと突然,後翅の模様が現れ,捕食者である鳥を威嚇する。スズメガやヤガの幼虫の胸部背面にある目玉模様も同じ効果をもつ。オドシガエルは,しりの左右に目のような斑紋をもち,危険な相手が近づくと,しりを上げ振るようにして威嚇し逃走する。熱帯のチョウチョウウオの中には尾部に目玉模様紋をもち,こちらが頭のように見せ,相手がここを襲うと反対方向に逃走する〈はぐらかし〉の効果をもつものもある。

 直接,有害な毒をもち身を守る動物は,昆虫やヘビ,カエルなどに多いが,このような動物もつねに毒を用いるわけではない。むしろ相手に注意させることで攻撃を避けている場合が多く,ガラガラヘビの発音はその例である。また,はでで目だつ体色が相手に警戒させ,身を守る効果も上げている。毒ガエルや毒ヘビの多くが鮮やかな体色をしているのはそのためである。こうした有毒な動物の体色や形,行動などに似た形態,色彩を有する無毒な動物が擬態で,これも一つの防衛行動の中に入れられよう。このほか,捕食されそうになる,あるいは捕まると相手の嫌う物質を放出するのも防衛である。アゲハチョウの幼虫が胸部背面から突起を出しにおいを放出するとか,ゴミムシが捕まるとにおいを出すのがその例である。タコやイカの墨,ブダイが睡眠中に粘膜を体の周囲に分泌するのも防衛である。シカの仲間は速い走力をもち,走って逃げるのも防衛であり,このときはジグザグに走って捕食者をまぎらわす。ウサギが巣穴から,わざと違う方向に遠く逃げるのも仲間を守る意味で防衛行動に含まれよう。このような行動は,自分の身を捨てても同種の仲間を守る意味で利他的行動ともいわれる。

動物が自分の所有する有利な特徴を用いて,不安の対象,あるいは敵対する相手に対して攻撃をしかけることで,捕食のための攻撃とは区別する。一般に不自然に接近する他個体は,その動物にとっては不安な相手であるから,威嚇ないし警告の信号を出して排除しようとする。それでもなお相手が退かないと,葛藤状態に陥り,さらに相手が近づいた場合には闘争になる。C.ダーウィンはイヌの表情から,この不安と闘争,あるいは服従に至る経過を述べ,とくに不安や葛藤が高まっているとき,前傾姿勢で歯をむき尾や耳を立て,不動の状態になることを指摘した。動物の世界での闘争は異種間より同種の仲で多く見られ,とくに配偶時の雄間に多い。角をもつシカやウシ,ヒツジは,雄どうし,激しく頭をぶつけ角をからめて闘争する。サルは歯をむき出し,前肢を用いて闘い,トゲウオは相手の腹部に頭でつきかかる。ニワトリ,キジはくちばしで相手の頭部をつつき,トカゲはかみ合う。このように角,きば,歯,つめ,脚などその動物が有する最も効果的な武器を用いて闘争は行われるが,相手が逃走を始めると攻撃は終わり,死に至ることはほとんどない。群れをつくる動物では,長い共同生活の間で,おのずから強弱の順位関係ができ,優位個体はおどすだけで相手を排除することもある。

肉食性の動物が食物を得るために相手を捕らえる行動である。最も直接的なのが肉食獣が相手を攻撃し捕らえる方法で,狩りhuntingと呼ばれる。しかし,捕食行動は獲物の生態や習性と密接に結びついており,きわめて多様である。ライオン(とくに雌)は,2,3頭が組になり,待ち伏せする個体と狩り出す個体に分かれて協力して捕らえる。カマキリは枝や葉,あるいは花の中に隠れて待ち伏せ捕食し,クモの網も獲物を捕らえるためのものである。アンコウは体の突起をゆり動かして小魚を誘い捕食する。ある種のホタルの雌は,別種の発光信号を出し,近づいた別種の雄を捕食する。キーウィは長いくちばしで地をほじり,小さな地中の動物を捕らえる。ガラパゴスのキツツキフィンチは,小枝やサボテンのとげで木の中の虫をほじり出す。テッポウウオは水中から水を噴き出して,葉の上の虫を水の上に落として捕食する。なお草食性,腐食性を含めて,餌のとり方一般にかかわる行動を採食行動と総称する。

 これ以外にも,行動の意味合いに応じて,新しい環境におかれた動物がしばらく周囲をさぐり回る探索行動とか,巣づくりのための営巣行動,仲間を認知し,互いの親和を強める挨拶行動,敵から逃げる逃走行動,目的は不明りょうだが,その時点での衝動の解消や将来の行動の予備的行為と思われる遊び(例えばじゃれる子ギツネ)などに細分することが可能である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「行動」の意味・わかりやすい解説

行動
こうどう
behaviour

人間や動物が内的外的刺激に対して示す反応の総称。行動は観察座標や測定尺度の取り方いかんによって,たとえば生体内の化学物質の変化や筋反射としてとらえることもできるし,また生体の示す全体的な,あるいは目的的反応としてとらえることもできる。前者を分子的,微視的行動,後者を全体的,巨視的行動というが,この区別はもとより相対的なものにすぎない。行動を対象とする最近の心理学では,取扱われる行動は必ずしも外部から観察可能な身体的行動にのみ限られず,思考認知の過程などにおける精神的行動をも含む。

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普及版 字通 「行動」の読み・字形・画数・意味

【行動】こうどう

行為。

字通「行」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「行動」の意味・わかりやすい解説

行動
こうどう

行為

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世界大百科事典(旧版)内の行動の言及

【実践】より

…その場合,自然に対する働きかけを,とくに〈労働〉と呼び,社会に対する働きかけを,倫理的・政治的活動として,とくに〈行為〉(英語conduct,ドイツ語Handlung,フランス語conduite)と呼ぶことがある。これに対して,〈行動〉(英語behavior,ドイツ語Verhalten,フランス語comportement)は,主として外部から観察しうる人間や動物の,なんらかの物あるいはできごとに対する反応活動をいう場合が多い。もちろんこれらの語は,日常的には厳密に区別されない。…

【実践】より

…その場合,自然に対する働きかけを,とくに〈労働〉と呼び,社会に対する働きかけを,倫理的・政治的活動として,とくに〈行為〉(英語conduct,ドイツ語Handlung,フランス語conduite)と呼ぶことがある。これに対して,〈行動〉(英語behavior,ドイツ語Verhalten,フランス語comportement)は,主として外部から観察しうる人間や動物の,なんらかの物あるいはできごとに対する反応活動をいう場合が多い。もちろんこれらの語は,日常的には厳密に区別されない。…

※「行動」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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